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保険業法の一部改正で意向把握義務・情報提供義務が新設
● 保険の信頼性確保のために募集規制を導入
  「保険業法等の一部を改正する法律」が平成26年5月23日に成立し、同月30日に公布された。
  この法律では、保険募集の形態の多様化が進展している状況等を踏まえ、保険募集の基本的ルールの創設、保険募集人に対する規制を整備することなどを定めている。一方、保険仲立人に係る規制の緩和など、保険市場の活性化に向けた改正も行われる。
  保険募集に関係の深い部分について見てみると、次のような新たな規制が導入されている。
1.  「意向把握義務」として、保険募集の際、「顧客ニーズを把握」「当該ニーズに合った保険プランを具体化」「顧客ニーズと提案プランの最終的な確認」のような対応をとること。
  顧客の意向把握について、金融審議会「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ報告書」によると、以下のような水準が求められることになる。
保険プランを提案する際、そのプランが顧客の意向にどのように対応しているかを含めて説明する。その後、契約締結前に再度顧客の最終的な意向を確認したうえで、当初に把握した顧客の意向と相違している場合には、その違いについて確認する。
保険プランを提案する際、顧客のどのような意向を推定してプランを設計したかの説明を行い、そのプランが、顧客の意向とどのように対応しているかを説明する。その後、契約締結前に再度顧客の最終的な意向と募集人が推定してきた意向を比較し、両者が相違していないことを確認する。
2.  「情報提供義務」として、保険募集の際に、顧客が保険加入の適否を判断するのに必要な情報の提供を行うこと。
  この「顧客が保険加入の適否を判断するのに必要な情報」とは、具体的には「保険金の支払条件(どのような場合に保険金が支払われるか)」「保険期間、保険金額等」など、また、複数保険会社の商品の比較推奨販売を行う場合には、「取扱商品のうち比較可能な商品の一覧」「特定の商品の提示・推奨を行う場合、その理由」などである。
  保険業法第300条では「保険契約の契約条項のうち重要な事項を告げない行為」が禁止されているが、「情報提供義務」が新設されたことにより、この「重要な事項」の範囲が「保険契約者等の判断に影響を及ぼす重要な事項」に限定されることとなる。
● 体制整備が急務となる保険募集人
  また、保険募集人に対する新たな規制として、募集の実態に応じた体制整備を義務付ける規制が導入される。今までは、保険会社に対して「保険募集人の実態把握」「保険募集人の管理・指導」に対する体制整備を求めていたが、今後は保険募集人に対しても、業務の規模・特性に応じた体制整備が求められることになる。
  この法律は、公布の日から2年以内に政令で定める日から施行される。政令や内閣府令の整備等の期間を考えると施行までには1年半程度の時間がかかると思われるが、施行以前においても、保険業法改正の趣旨に沿い、顧客の意向把握、顧客への情報提供等を念頭に置いた募集活動が求められることになるだろう。
2014.06.30
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