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平成25年度査察の脱税総額は約145億円で39年ぶりの低水準
● 185件を処理し63.8%に当たる118件を検察庁に告発
  いわゆるマルサと呼ばれる国税庁の査察は、脱税でも特に大口・悪質なものが強制調査され検察当局に告発されて刑事罰の対象となる。国税庁が公表した「平成25年度 査察の概要」によると、査察で摘発した脱税事件は前年度より5件少ない185件、脱税総額は前年度を約29.3%下回る約145億円と昭和49年度(約123億円)以来39年ぶりの低水準だった。これは、脱税額3億円以上の大口事案が前年度を7件下回る4件と大幅に減少したことなどが要因だ。
  継続事案を含む185件(前年度191件)を処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)し、うち63.8%(同67.5%)に当たる118件(同129件)を検察庁に告発した。この告発率63.8%は、前年度から3.7ポイント減少し、38年ぶりの低水準だった平成23年度(61.9%)に次ぐ低い割合だった。
● 35年ぶりに1億円を下回った告発分1件当たりの平均脱税額
  告発事件のうち、脱税額が5億円以上のものは前年度より1件少ない2件だった。近年、脱税額3億円以上の大口事案が減少傾向にあり、平成25年度の脱税総額145億円は、ピークの昭和63年度(714億円)の約20%にまで減少している。告発分の脱税総額は前年度を約58億円下回る約117億円、1件当たりの平均の脱税額は同3,600万円減の9,900万円と、昭和53年度(9,500万円)以来35年ぶりに1億円を下回った。
  告発事案を税目別にみると、「法人税」が前年度から15件減の64件で全体の54%を、脱税額でも約54億円で46%を占めた。所得税は同4件減の18件(脱税額約20億円)と減少したが、消費税は同4件増の16件(脱税額約9億円)、源泉所得税は同8件増の14件(脱税額約15億円)とともに増加した。源泉所得税は過去最高の告発件数だった。なお、消費税の脱税額のうち約3億円は消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)のものである。
● 査察での告発事案は99%有罪、9人に実刑判決
  告発件数の多かった業種・取引は、前年度は11件で1位だった「クラブ・バー」が12件で2年連続のトップ、次いで「不動産業」が9件、前年度11件で「クラブ・バー」とともにトップだった出会い系サイトなどの「情報提供サービス」と「建設業」、「保険業」が各5件、「広告代理業」と「人材派遣業」がともに4件で続く。「クラブ・バー」では、ホステス報酬に係る源泉所得税を徴収していながら未納付だったものが多い。
  なお、平成25年度中に一審判決が言い渡された116件のうち、115件と約99%に有罪判決が出され、うち9人に対し執行猶予がつかない実刑判決が言い渡された。1件当たりの犯則税額は5,200万円で、平均の懲役月数は12.9カ月、罰金額は約1,200万円だった。
  一般的に査察の対象選定は、脱税額1億円が目安といわれ、また、脱税額や悪質度合いの大きさが実刑判決につながる。査察で告発されると、社会的信用を失うだけでなく、巨額な罰金刑や実刑判決もありうる。ちなみに、刑罰は10年以下の懲役に、罰金は1,000万円(脱税額が1,000万円を超える場合は、脱税相当額)以下となっている。
参考 国税庁:平成25年度 査察の概要
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2013/sasatsu_h25/index.htm
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2014.07.07
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