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精神障害による労災請求件数は1,409件で過去最多に
● 若い世代にもメンタルヘルスの問題が
  企業にとって、従業員の健康面に関する問題としてすぐに思いうかぶものといえば、過重労働とメンタルヘルスではないだろうか。厚生労働省が6月27日に発表した「平成25年度 脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」によれば、精神障害についての労災請求件数は1,409件(前年度比112%)で過去最多となった。また、発病した精神障害が業務上のものと認められた認定件数(労災保険給付の支給決定件数[下表参照])は436件(前年度比92%)で、こちらは4年ぶりの減少であった。そのうち、自殺(未遂を含む)については、請求件数177件(前年度比105%)、支給決定件数63件(前年度比68%)であった。
  職種別の請求件数では、一般事務従事者(227件)、商品販売従事者(90件)、自動車運転従事者(84件)が上位を占め、また、支給決定件数も同様に、一般事務従事者(50件)、商品販売従事者・自動車運転従事者(ともに26件)の順であった。
  年齢別の請求件数では、30歳代(428件)、40歳代(421件)、20歳代(277件)、支給決定件数では、30歳代(161件)、40歳代(106件)、20歳代(75件)の順となり、20〜30歳代の若い世代にもメンタルヘルスの問題が発生していることが伺える。
● 精神障害の原因には時間外労働の影響が大きい
  精神障害の出来事(原因)の類型別に支給決定件数436件の内訳をみると、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」など、「仕事の量・質」を原因とするものが104件と最も多く、次いで、「自分が重度の病気やケガをしたり、悲惨な事故や災害を体験、目撃した」などの理由によるものが95件、ひどい嫌がらせやいじめ、暴行など対人関係によるものが78件、セクシュアルハラスメント(セクハラ)を受けたなどの理由によるものが28件などとなっている。
  残業や休日出勤等の多さを示す時間外労働時間数別の状況をみると、1カ月あたりの時間外労働が20時間未満の人の割合は20%にとどまる。一方、20時間以上100時間未満の人の割合と100時間以上の人の割合はそれぞれ28%で、これを合わせると半数を超えており、精神障害を起こす要因として時間外労働の影響が大きいことが伺える。その他、労働時間を調査するまでもなく明らかに業務上の出来事が原因であると判断されるケースも23%と大きな割合を占めている。
  また、平成24年に行った厚生労働省の別の調査(注)でも、労働者の約6割が仕事や職業生活に関して強い不安や悩み、ストレスを抱えているとの結果が出ている。企業にとって、社内にメンタルヘルス上の悩みを抱えた社員がいるということは、他の社員にとっても仕事に対するモチベーションや作業効率の低下要因となりかねない。今後さらに、その対策に取り組むことが重要なリスクマネジメントといえるのではないだろうか。
  (注)厚生労働省「平成24年 労働安全衛生特別調査(労働者健康状況調査)」
※表をクリックすると別画面で大きく表示されます。
*1 本表は、労働基準法施行規則別表第1の2第9号に係る精神障害について集計したものである。
*2 決定件数は、当該年度内に業務上又は業務外の決定を行った件数で、当該年度以前に請求があったものを含む。
*3 支給決定件数は、決定件数のうち「業務上」と認定した件数である。
*4 認定率は、支給決定件数を決定件数で除した数である。
※  厚生労働省「平成25年度 脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」(平成26年6月27日発表)、表2-1「精神障害の労災補償状況」より
参照 厚生労働省:「平成25年度 脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」(平成26年6月27日発表)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000049293.html
2014.07.14
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