> 今週のトピックス > No.2860 |
役員の賠償責任への備えは大丈夫? | |||||||||
● 中小企業でも株主代表訴訟の可能性が
今年5月、光ケーブルなどを巡るカルテルを結び、独占禁止法違反(不当な取引制限)で約88億円の課徴金を納付した住友電気工業の当時の役員ら22人に同額の損害賠償を求めた株主代表訴訟がありました。株主側は「経営陣がカルテルの防止義務を怠ったうえ、違反を自主申告して課徴金減免を受ける制度を利用せず会社に損害を与えた」と主張していましたが、役員らが会社に5億2,000万円の解決金を支払うかたちで和解が成立しました。
このような株主代表訴訟の対象は大企業ばかりとは限りません。株式が非公開で、株式の大半を親族株主が所有する同族会社でも、議決権を持つ株主なら株主代表訴訟を起こすことができます。したがって、会社の規模にかかわらず、役員が賠償責任を追及されるリスクがあるといえます。 また、カルテルなどの不祥事を起こした企業の役員の中には、その事実を知らなかった役員がいることも多くあります。特に社外役員などは、不祥事に気づかないまま巻き込まれるリスクが高くなります。 ● 役員賠償責任(D&O)保険、拡充の傾向に
このような役員の賠償責任に対する備えとしては、役員賠償責任(D&O)保険があります。損害保険各社からはさまざまな内容の役員賠償責任(D&O)保険が販売されており、最近では社外取締役や社外監査役を対象に、社内役員とは別枠で補償を設定できたり、不祥事の原因を調べる第三者委員会の設置費用を補償できたりするタイプもあります。
一方で、こうした保険の保険料の負担について、以前は役員が敗訴した場合のリスクを担保する保険料を会社負担とすることは商法上問題ではないか、という指摘がありました。この指摘を受けて、損害保険各社では、株主代表訴訟で被保険者が損害賠償責任を負う場合は基本保険料(普通保険約款部分)は免責とし、別途このリスクの担保を希望するときは、特約条項を付帯して保険料を追加する契約形態をとっています。この場合の経理処理は、以下のとおりです。
役員賠償責任(D&O)保険は、補償額の限度や免責事項がある点など、あらゆる賠償リスクに対応できるわけではありませんが、まだ加入していない場合は検討したほうが良いでしょう。
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2014.07.28 |
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