>  今週のトピックス >  No.2867
高利回り、低格付の投資商品にご注意!
● 高利回りを求め、投資マネーが世界を一巡
  長引く金融緩和で投資マネーが世界中の高利回り商品に流入している。米国債10年物の利回りが昨年のピーク時より0.5%ほど低い2.5%程度まで下がっている。ドイツ国債10年物は1.1%程度、日本国債10年物も0.5%程度まで低下してきている。機関投資家が国債を大量購入したことで国債価格が上昇しているため、利回りが低くなっているのだ。投資商品としての国債の魅力が低下していることから、機関投資家は利回りの高い代替資産を探っている。
  その結果、その資金はREIT※1に流入したがこれも利回りが低下。S&P先進国REIT指数※2を見ると、年初215.19ポイントから34ポイント程度上昇し、249.61ポイント(7月23日)とリーマンショック前の水準まで達している。そこでREITに次いで買われたのが債務問題で苦しんだブラジルやスペインなどの国債である。このように投資資金が世界を循環し、世界中の資産価格が上昇した。
● 行きつくところまで行きついた!? 投資過熱
  さらに機関投資家が目を向けたのが新興国だ。セネガル、ケニアなどは欧米の資金を当て込んで、相次いで国債を発行。日経新聞によると、セネガルが7月に発行した5億ドルの10年物国債には、発行額に対して8倍もの応募があったという。米国格付け会社のS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)社が7月31日現在で公表しているソブリン格付によるとセネガル、ケニアともB+であり、「投機的」に分類される水準だ。セネガル国債の利回りは6.25%程度とかなり高いが信用リスクもかなり高い。通常であればこのような信用リスクが高い国債には投資しないのが一般的であるので、かなり過熱している状態といえるだろう。
  S&P社は7月30日、アルゼンチンの格付けをCCC−から「選択的デフォルト(SD)」に引き下げた。同社によると、SDは21段階ある格付けのなかで実質的に最下位の水準。これは、アルゼンチン政府がアルゼンチン国債の利払いを猶予期間が過ぎても履行できなかったためである。日本の投資家も投資先に高い利回りを追求する姿勢を強めているが、高利回りの裏に抱えるリスクを忘れて元も子もなくすことは避けてもらいたい。
※1  Real Estate Investment Trustの略。投資信託の一種で、多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産などを購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する商品のこと。
※2  米国S&P社が提供する外国不動産インデックス。先進国25か国、200以上のREIT銘柄が対象。
  
伊田 賢一 (いだ・けんいち)
株式会社FPウィム 代表取締役、株式会社WINKS 代表取締役
CFP®認定者、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
証券会社3社に勤務の後、2002年に独立系FPとして活動開始。独立系FP会社役員を経て、2007年に相談業務を中心としたFP会社として株式会社FPウィムを設立。2010年には多角的なFPサービスの提供を目的とした株式会社WINKSを設立。相談者の心の内の心配ごとをいち早く見つけ、個々人の夢や目標に応じたマネープランニングを提案し、実行援助、管理、見直しに至るまで包括的なサービスを提供している。個人や企業の相談は月平均30件、講演、セミナーも年間60件を超えるなど、幅広いファイナンシャル・プランニング業務を行っている。さいたま朝日に「家計の知っ得」、ホケモンに「保険の基礎知識」などを連載中。おもな著書に「うかる!FP技能士2級」「うかる!FP技能士3級」「うかる!証券外務員2種」などがある。
NPO法人日本FP協会 埼玉支部副支部長、 マネーカフェさいたま代表、埼玉県金融広報委員会アドバイザー。
株式会社FPウィム http://fpwim.com/
  
  
2014.08.11
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