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「固定残業代」導入企業の9割が求人で不適切記載
● ハローワークで求人を受け付けてくれなくなる可能性も
  「固定残業代」を導入する企業がハローワークに出した求人のうち、約9割に不適切な記載があったことが、弁護士などで構成される「ブラック企業対策プロジェクト」の調査で明らかになった。
  固定残業代については、正しい運用がされていないことでこれまでも問題となっていたが、今回の発表により、厚生労働省も深く踏み込んで実態を調査することになりそうだ。
  固定残業代について誤った表記で求人をしていると求人受付されなくなったり、また指導を受ける可能性もあるため注意が必要である。
  このたびの調査で、残業代の額や残業時間などが明記されていないという不適切な表記が数多く発覚したことを受け、今回は正しい求人票の記載方法とトラブル防止のための事前対応策についてご紹介する。
● 固定残業代が何時間分の時間外労働手当相当なのか明確にすること
  固定残業代は、一定額の残業代をあらかじめ定めて支払うことであり、決して違法ではない。導入している企業も多いが、運用面で問題も多い。残業代が何時間分にあたるか書面に明示し、基本給とは明確に分けて記載し、さらに事前に決めた残業時間を超えて働かせたときは、当然ながら超過した分を支払わないといけない。しかし、このことをきちんと遵守できていない企業が多いのが実情だ。約束した残業時間分を超えた時間外労働については、必ず支払わなければならないことに注意しよう。
  以下、固定残業代を導入する企業について求人の記載例を紹介する。
<求人 記載例>
  ・基本給 240,000円  (完全週休2日制、月平均160時間労働)
  ・固定残業代 56,250円  (30時間分の時間外労働分として毎月一定額支給)
    ※ 時間外労働の有無に関係なく支給。30時間を超えた分は、時間外労働手当として追加で支給
  ・時間外労働手当 (残業時間30時間分を超えた分)
● 固定残業代をめぐるトラブル増加、企業にとって厳しい判例
  近年、求人や労働契約の際に固定残業代を盛り込む企業の増加とともに、残業代に関する労使トラブルも増えている。判例を見ると企業側に厳しい判決が多いのだが、大事なのは、法律を正しく理解して、運用をきちんとすることである。
  求人票と労働契約書、給与明細、そして労働の実態と就業規則の記載内容は、裁判になった際に証拠として重要になるので細心の注意を払っておきたいところである。
  まずは固定残業代を導入している企業は、自社の固定残業代の実態をよく把握したうえで、就業規則を早急に見直し、運用面も含めて正しい方向へ導かなければならない。なお固定残業代を払っていても規定超過分の残業に対して未払残業代として請求されるケースも増えてきており、実態が伴わず正しく運用されていなければ決して安心できるわけではないということを理解しておきたい。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2014.09.01
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