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通勤時のケガが労災の適用となる要件とは
● 通勤途中のケガは通勤災害として労災保険の対象になる
  労働者が仕事中にケガをした場合、原則として業務災害として労災保険が適用になるが、同じように通勤途中のケガや事故に対しても通勤災害として保険給付を受けることができる。しかしながら中小企業の経営陣及び労働者は、通勤災害のことを知らない人も意外と多く、病院に行って診察をしてもらった際に、指摘されてはじめて通勤災害という制度に気づく場合もある。
  本来であれば労災保険を使って給付を受けなければいけないのに、誤って健康保険証を使用していたりすることがあるが、それは大きな問題に発展する可能性がある。
  誤った対応をすると会社にとっても面倒なことになると同時に、従業員側もやらなければいけないことが増えてしまう。
  今回は基本的な通勤災害の要件について簡単にまとめるとともに、最近よく受ける通勤災害に関する素朴な疑問に関しても解説することとする。
● 労災保険の「通勤」の定義とは?
  まず労災保険における「通勤」とは、労働者が就業に関し、下記の移動を合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものと定義されている。
    <移動の内容>
    (1)住居と就業の場所との間の往復
    (2)就業の場所から他の就業の場所への移動
    (3)住居と就業の場所との間の往復に先行し、または後続する住居間の移動
  移動の経路を逸脱し、または移動を中断した場合には、その間とその後の移動は「通勤」とはならないが、逸脱または中断が日常生活上必要な行為であって、最小限度のものである場合は、逸脱または中断の間を除き「通勤」となる。
  逸脱または中断の事例としては、日用品の購入(コンビニ立ち寄り等も含む)、病院・歯科医院への通院、クリーニング店訪問などが該当する。一方で居酒屋に飲みに行くのが日常的行為だからといっても、その場合、逸脱してしまえばその後に通勤経路に戻ってきてもそれは通勤にはならないのでよく理解しておきたい。
● 通勤経路の届出と違ったルートであっても通勤災害となる
  会社は、通勤経路について正しく届出をするように従業員に促しているが、実際の通勤経路と届出の内容が異なるケースも見受けられる。そのようなケースについて、「届出とは違う通勤方法(電車通勤の届出となっているのに実際は自転車通勤していた等)で通勤途中に事故にあった場合、労災保険の適用になるのか?」という質問が多く寄せられる。そのような場合でも労災保険法の通勤の定義の1つである合理的経路及び方法に該当するので、手続きをすることによって労災保険の給付を受けることができる。
  あくまでも保険給付の決定をするのは労働基準監督署であって、会社が勝手に判断して通勤災害に関する労災保険の申請手続きを拒んだりすることのないようにしたいところである。
  ただし、通勤経路の変更届の提出漏れや通勤手段の虚偽の申請については、会社はその内容によっては従業員に懲戒処分を下す(就業規則で規定が必要)とともに、通勤手当の不正受給による過払い分は、当然ながら返還してもらうことができるのでしっかりと押さえておきたい。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2014.09.16
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