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通勤手当の不正受給を防ぐためのポイント
● 通勤手当の不正受給発覚後に労使トラブルになるケースも
  通勤手当の不正受給に関しては、さまざまな会社の人事労務担当者と話している中で話題にあがることが結構多い。会社は、従業員の通勤手当の不正受給をさせないようにさまざまな工夫をする必要があるが、まだそこまで手がまわっていないのが現状である。
  しかしながら通勤手当の不正が発覚したあとの対応は意外と面倒である。不正受給分の返還や懲戒処分などをめぐって労使トラブルとなることも考えられるので、今回はそのような不正を防ぐためのポイントについてまとめておく。
● 通勤手当の不正受給の4つのパターン
  会社は、通勤手当を払いすぎていないか、通勤経路の届出書をきちんとチェックする必要がある。会社側も従業員もたまたま勘違いしていることもあるが、従業員側が虚偽の申告をして不正に受給をしているケースも比較的多い。通勤手当の不正受給については下記の4つのパターンを押さえておいた上でチェックに活かしたい。
  <通勤手当の不正受給の4つのパターン>
     1.  バス通勤として申請しているが、実際は自転車又は徒歩で通勤している。
     2.  会社に近くなる場所に引越をしたのに、届出をしないで引越前の通勤経路での通勤手当をもらい続けている。
     3.  自宅住所は変更していないが、自宅より会社に近い同棲相手のところから通勤し、通勤手当を浮かせている。
     4.  定期代が高くなるような通勤経路で申請しているが、実際はもっと安い通勤経路を利用している。
● 不正を防ぐためには、定期券のコピーや領収書を添付してもらう
  会社は、不正受給を予防するためにも通勤経路の届出書には定期券のコピーや領収書をあわせて提出してもらうべきである。住所の変更がないものに対しても定期的に(例えば2年ごとなど)通勤経路確認書の提出を義務付け、その際に住民票記載事項証明書を添付して提出してもらうことができればベストである。
  また不正受給に関しては厳しい処分を下すことを就業規則へ記載し、さらに同様に通勤経路の届出書そのものにも同じような内容を記載しておくとさらに抑止効果がある。
  会社は、不正受給した通勤手当については、その差額を民法の「不当利得の返還義務」により、10年前の分までさかのぼって返還させることができるので、その点についても朝礼や部署内のミーティング、社内回覧などで周知しておきたい。
  また、就業規則上の通勤手当申請のルールとして、はっきりと「合理的かつ経済的な経路で計算して通勤手当を支給する」と記載しておけば、本人からの合理的とはいえない通勤経路の申請に対しても、会社の指定するルートで通勤するように指示することができる。
  通勤手当の不正受給は、不正を許さない社内風土づくりとしっかり届出書をチェックする仕組みがあればある程度は防ぐことができるので、上記のような対策をとにかくコツコツと実行していくのがよい。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2014.09.29
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