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日本の食料自給率について考える
● 日本の食料自給率は“カロリーベース”で39%、4年連続で最低水準に
  農林水産省が8月に発表した平成25年度の日本の食料(全体)自給率は39%で、4年連続の最低水準であった。昭和40年に73%だったこの数値は低下し続けている。ちなみに2011年試算によると穀物自給率は28%で、OECD加盟34か国中29番目になる。政府は、食料の安定確保に向けた危機感のもと、多方面からの対策を検討しながら自給率引き上げの目標も掲げているが、その具体的な成果は見えてきていない。
  食料自給率とは、国内消費のうち、国産の農水産物でどの程度賄っているかを示す指標だが、その考え方を算式で表すと、
  食料自給率=国内生産/国内消費仕向(国内生産+輸入−輸出±在庫の増減) となる。
  また、これを生産量(kg等の重量)で換算する場合(重量ベース)や、生産額(円等の金額)で換算する場合(生産額ベース)の他、1人1日当たりの供給熱量で換算する方法(カロリーベース)がある。上記の39%はカロリーベースの値で、調査の項目内容から国際比較がしやすいという(生産額ベースでは各国の単価や税、加工品の内訳など把握できないデータがあるため)。生産額ベースの食料(全体)自給率では65%となるが、こちらも昭和40年の86%から低下してきて過去最低値となった。ちなみに、穀物自給率の28%は重量ベースでの試算結果である。
● 多方面に影響する自給率向上への取り組み
  日本の低い自給率にはこれらの数値の捉え方にも原因がある。畜産物(肉や卵等)は輸入飼料を餌として育てられているため、飼料自給率を加味して輸入分を国産物に含めない調整が行われている。これにより、例えば、鶏卵の重量ベース自給率95%が11%にまで落ちてしまうのだ。また、輸入飼料の価格は安いため生産額ベースではカロリーベースよりも自給率が高くなること、肉は野菜よりもカロリーが高いため野菜などの自給率が上がっても全体のカロリーベース自給率の向上にはほとんど貢献しないことなど、それぞれの計算方法の課題もある。
  計算式から、国内生産が増加して輸出が増えるかまたは輸入が減ることにより自給率が上がることは理解できるが、市場規模の縮小(売らない・買わない・食べない)や輸入途絶によって生じる自給率の向上は国内経済の発展を阻害することになる。
  TPP交渉も続く中、日本の食料自給率向上への取り組みは避けては通れない。政策的という見方もあるが、穀物の中で主食用の米は重量ベースでは自給率100%を維持しており、耕作地に限界のある国土で品種改良等の技術開発を重ねてきた。野菜の自給率も同ベースで79%と比較的高く品質の高さには誇るべきものがある。
  自給率向上に関連する今後の課題として、国内の遊休土地等の有効活用や農業経営の改革、さらに高齢化し減少している人口動態の中で国民が取るべき栄養バランスの改善(健康増進)などもある。
  これらを一朝一夕に実現することは容易ではないが、農地整理による自然災害(洪水等)の防止効果が期待できたり、輸入量を減らすことで、環境問題に直結するバーチャルウォーター量の減少・フードマイレージの減少にも繋がることが期待できるなど、自給率向上のためのさまざまな取り組みは将来的に多方面に影響する意義あるものとなるだろう。
バーチャルウォーター 輸入農産物等を仮に自国で生産する場合に必要であった水資源量。日本の年間輸入量は年間約627億m3で、1人当たり換算で一般家庭の年間水使用量の約5.6倍に相当する(平成22年 農林水産省資料より)。
フードマイレージ 輸入される食料の重量×輸送距離で示される指標(現状、日本は米英韓国の3〜5倍)。
参考資料 農林水産省:食料需給表(平成25年度)
  農林水産省:平成25年度食料自給率をめぐる事情
2014.10.02
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