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国際福祉機器展に見る“次世代介護”をにらんだIT技術
● 注目は他職種連携を実現できるICT
  10月1〜3日の3日間、恒例の国際福祉機器展が東京ビッグサイトで開催された。今年で41回を数える同展では、世界15カ国から585の企業・団体が参加、展示された福祉機器は2万点におよぶ。
  今回目立っていたのは、次世代をにらんだ新技術・アイデアだ。たとえば、高感度センサーや駆動システムなどは、具体的な機器開発には至らないものの、将来的には介護者負担を限りなくゼロに近づけるロボットの基礎技術となりえる。認知症対応のロボット類も、試作機を重ねる中でセラピー効果をより高める工夫が施されている。数年後には飛躍的な市場拡大を予期させるという点で、今回の機器展は大きなターニングポイントとなるかもしれない。
  そうした中、ブース拡大が特に目立ったジャンルの一つとして、ICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)を活用した多職種連携システムがあげられる。病床再編によって病院から在宅への復帰スピードが早まる中、在宅の重度者を想定した医療・介護などの多職種連携の質がますます問われている。
  国が目指す地域包括ケアシステムにおいても多職種連携は大きなカギであり、来年度からの介護保険制度改正でも、地域における医療・介護の連携拠点の整備が進められる予定である。そうした中で、場所や時間を問わずに情報共有の質を高めていくためには、ICT活用が欠かせなくなっている。
  たとえば、クラウドサービスによって多職種の人々が利用者情報にアクセスし、掲示板スタイルを通じて情報を加筆するというシステムがある。多職種はパソコンのみならず、スマホやタブレットなど多様な端末によってリアルタイムでの更新情報が確認できる。また、利用者家族や介護職が医療について専門職からのアドバイスを得たい場合、掲示板上でやりとりを行なうことも可能だ。カメラ・ビデオ機能を使って画像情報(利用者の皮膚の状態や運動機能の状況など)も共有できるうえ、音声認識機能による文字入力にも対応できる。
● カギは「情報の共有化」
  もっとも、こうした情報共有システムは今に始まったことではなく、すでに多くの地域で実践導入が図られている。自治体や医師会などの広域団体が主導しているケースも多い。今回の機器展では、ベースとなるシステム開発に新規参入の事業者も目立ち、競って新たな機能の付加にも取り組んでいる。
  たとえば、あるサービスでは、掲示板に上げられた情報に対し、SNS(ソーシャルネットワーキングサイト)で見られる「いいね」評価を参加する多職種の人々がつけていく機能がある。企業側によれば「一種の遊び心」としているが、若い専門職などにとっては、チームケアへのモチベーションを高める一助になるかもしれない。同時に、介護にかかるネット上の最新ニュースが自動配信されるしくみもあり、多機能型のコミュニティツールとしての充実が図られている。
  また、施設内の多職種連携を進めるべく、介護と看護といった異なる職種の情報を、いかにデータとして統合していくかという点に腐心したシステムもある。在宅の重度者対応のカギとなる定期巡回・随時対応型サービスにおいて、オペレーションセンターと訪問担当者の情報共有を特に強化したものも紹介されていた。医療・介護におけるICTの多様化・高度化は、今後も飛躍的に高まり、介護ロボット技術と並走しつつ有望市場としてヘルスケア業界を牽引することになりそうだ。
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。
  
2014.10.09
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