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健康保険の傷病手当金申請、近年増加傾向に
● 傷病手当金制度は健康保険の被保険者が対象
  「傷病手当金」は、健康保険の給付の1つで、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度である。健康保険の被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に生活費用の補填として給付されるわけだが、近年この傷病手当金の申請をする被保険者が増加傾向にある。
  被保険者自身は、傷病手当金の制度そのものを知らないこともあると思うが、中小企業の経営者は、いざというときに備えて傷病手当金の制度の概要は押さえておきたいところである。
  なお、傷病手当金は、健康保険(健康保険組合または全国健康保険協会)の被保険者が対象となっており、国民健康保険に加入している人は原則対象とならない。
● 対象となる被保険者の要件とは?
  傷病手当金の対象となるのは、次の4つの要件を満たしている場合である。
   1.  業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
労災、美容整形などは対象とならないが、健康保険以外の自費診療でも対象となる。
   2.  仕事に就くことができない状態であること
今までの業務に従事できるかどうかを基準として社会通念に基づいて保険者が判断して決定する。
   3.  連続する3日間(待期)を含め4日以上休業していること
待期については、土日や年次有給休暇を含み、給与の支給を受けている休暇でも問題ない。
   4.  休業期間に給与の支払いがないこと
ただし、給与が傷病手当金の日額より少ない場合を除く。
  また、任意継続被保険者である期間中に発生した病気・ケガについては、傷病手当金は支給されない。
● 傷病手当金の支給額と受給できる期間は?
  傷病手当金は、1日につき被保険者の標準報酬日額の3分の2に相当する額(1円未満四捨五入)が支給される。標準報酬日額は、標準報酬月額の30分の1に相当する額(10円未満四捨五入)である。
  なお、給与の支払があっても、その給与が傷病手当金の日額より少ない場合は、傷病手当金と給与の差額が支給される。
  (例)標準報酬月額300,000円(標準報酬日額=10,000円)の場合、
  1日につき10,000円×3分の2=6,667円(50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上1円未満の端数は切り上げる)
  上記の例で考えると、標準報酬月額が、30万円の被保険者の場合、1ヵ月で約20万円になる。基本的に1ヵ月ごとや給与計算の対象期間ごとに申請をしていることが多いので、実務担当者は忘れないように注意したい。
  なお傷病手当金の支給期間は、最長で支給開始日より1年6カ月となっている。途中で復帰しても受給できる期間そのものが延びるわけではない。
  傷病手当金は、あくまで申請主義であり、請求があってから保険者が厳格に判断して支給決定するものである。要件を満たしていない場合や不正が疑われるような場合、調査の結果として不支給となることも増えてきているので企業側もこの点については理解しておきたい。
参考 協会けんぽ: 病気やケガで会社を休んだとき
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2014.10.27
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