> 今週のトピックス > No.2915 |
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富裕層への課税強化、海外移住時の含み益に課税検討 | ||||||||||||
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政府・与党は、富裕層の税逃れ対策を強化する方向で法改正の検討を進めているという。1億円を超える金融資産を持つ富裕層が海外に移住し、株式や投資信託などの含み益に対し所得税を課税するというものだ。平成27年度の税制改正大綱に盛り込まれる予定だ。
現在、日本国内に住む人が株式等の売却益を得た場合には、所得税と復興特別所得税15.315%、および住民税5%の計20.315%が課税される。ところが、含み益がある株式を保有したまま海外へ移住し、移住先で売却した場合には日本政府からは課税されず、移住先の税制が適用される。キャピタルゲイン課税が非課税となるシンガポール、香港、マレーシアなどに移住すれば、売却益には課税されなくてすむため、大きな税負担軽減対策となる。 過去の事例で大きな問題になったのが、“ユニマット事件”である。この事件では平成13年に、Aという日本人が香港において「ユニマットライフ」の株式を総額19億円で譲渡した。日本の税法では非居住者による資産の譲渡収入は課税対象にならないため、Aは申告をしなかった。ところが、国税当局は「譲渡時の住所は国内にあった」とし、所得税3億6,000万円、無申告加算税5,400万円を追徴した。Aは不服として課税処分の取り消しを求め、国税は敗訴した。 ITの発達で、非居住者となっても我が国の株式などを売買できる環境が整ってきたこともあり、課税逃れのため資産を海外に逃避させようと考える富裕層が増えている。永住権を持つ日本人は、2013年10月現在、シンガポールに1,850人、香港には2,150人と17年前の2.5倍に増えた。このような背景もあり、海外に移転した資産の譲渡所得への課税強化が検討されている。 昨年の税制改正で、その年の12月31日現在で5,000万円を超える海外財産を持つ個人は、その財産の種類、数量及び価額などを記載した“国外財産調書”を翌年の3月15日までに所轄税務署に提出しなければならなくなった。また、2015年以降は、有価証券を国外の証券口座に移管した場合には、金融機関からその情報(種類、数量、金額等)が税務署に自動的に通知されることになっている。国外財産調書制度に加え、税務当局への通知によっても国外財産を把握しようという目論見だ。 金融資産売却による課税強化は今後も進むものと思われる。財産や所得を隠すことよりも、合法的な税負担軽減対策を考えた方が良さそうだ。 ![]()
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2014.11.04 |
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