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世帯収入の差は健康リスクに影響する!?(厚労省調査)
● 収入が高い層のほうが、情報収集や快適・知的生活に貪欲!?
  10月下旬に厚生労働省から「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」(平成22年・1回限り」の調査結果が公表された。これは生活保護受給世帯の生活実態などを調べることが目的だが、同時に比較対象として一般世帯についても約32,000世帯を調査しており、そのうちの世帯収入の低位層※1と中位層※2の結果が併せて公表された。この一般世帯の低位層と中位層の比較から、世帯収入の差が健康リスクに及ぼす影響が垣間見えた。
  低位層と中位層で大きな差がなかったのは「住環境」の項目だ。10ポイント以上の差が付いた「寝室と食事をする部屋は分かれている」を除くと、収入に関わらず基本的な住環境はどちらも充足しており、住宅の性能や周辺環境も大差ない。
  一方、「耐久財の保有状況」の項目を見ると、低位層と中位層で普及率に20ポイント以上の差があったのは「温水洗浄便座」「ビデオレコーダー(DVDレコーダー含む)」「カメラ(デジカメ含む)」「パソコン」「書斎・学習用机」「自動車」「自動二輪及び原動機付自転車」だ。これらは現代の贅沢品ということになるのだろうか。
  とくに気になるのは「パソコン」だ。中位層の86.7%に対して、低位層は59.1%しか所有していない。一方、「携帯電話(PHS含む)」は、中位層98.1%、低位層85.3%とどちらも普及率は高い。しかし、「レジャーや社会参加」の項目の「インターネットを少なくともときどき利用」では、中位層の66.8%に対して低位層は32.1%とネット環境で差がついており、世帯収入が多いほうが情報収集に旺盛であることがうかがえる。
● 収入が高い層のほうが、健康リスクに対する意識が高い!?
  「普段の生活」の項目の中で、健康に関するもので低位層と中位層で普及率に差が付いた主なものを挙げると、「献立の種類を増やすようにしている」が14.9ポイント、「栄養のバランスをとって食事している」が13.7ポイント、「新鮮な食材で調理をしている」が11.9ポイント、「規則正しい食事をしている」が8.4ポイントといずれも中位層のほうが高かった。世帯収入が高いほうが普段から健康に対して意識していることがうかがえる。
  医療に関しても「必要なとき歯医者にかかる」が16.3ポイント(中位層87.5%、低位層71.2%)と差が目立つ。そのほか、「必要なとき医者にかかる」が6.8ポイント(中位層97.1%、低位層90.3%)、「風邪をひいたとき医者にかかるか市販薬を飲む」が5.5ポイント(中位層95.4%、低位層89.9%)と、いずれも中位層のほうが医療の利用率が高かった。
  ただし、「普段から散歩、体操、ジョギングや他のスポーツをしている」(レジャーや社会参加の項目)を見ると、低位層58.5%、中位層62.5%と大差は付かなかった。
  なお、「家計の状況」の項目では、保険加入の普及率も調査している。「生命保険(年金含む)」は中位層が87.9%、低位層が54.5%。損害保険は中位層が95.0%、低位層が69.2%であった。いざというときに保障(補償)が必要となるのは中位層よりも低位層のほうがより切実なはずだが、加入率を見る限りそれを満たしていないことがうかがえる。
※1  低位層は、年間収入342万円未満(勤労世帯)。
※2  中位層は、年間収入571〜726万円(勤労世帯)。
  
安藤 啓一 (あんどう・けいいち)
福祉ジャーナリスト。
千葉県出身。大学卒業後、新聞や雑誌記者を経験した後、介護福祉誌の編集長を経てフリーに。パラリンピックや障がい者支援、高齢者介護、医療経営、子育てなどの分野を中心に取材活動をしている。医療、介護と縦割りになりがちな情報を、当事者の目線にこだわり、地域発想、現場重視で「横串」編集することを心がける。鳥取県の「介護ガイドAi」(鳥広マガジン)は、編集を担当。介護テキスト、医療経営誌、介護専門誌などで執筆している。また3人娘の父親として、子育て支援活動にも取り組む。
  
  
2014.11.06
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