>  今週のトピックス >  No.2919
企業がインターン生を採用する際の注意点
● 労働力不足の時代、採用戦略の1つはインターン生の活用
  日本では2000年ごろから普及が進んできたインターンシップだが、大企業だけでなく中小企業においても実際にインターン生を受け入れたことがあるという方も徐々に増えてきている。今後の労働力不足の時代においては、インターン生を積極的に採用して、将来の右腕になってくれるような学生を正規採用できるように、企業側が自社のインターンシップ制度を魅力あるものにする必要がある。それと同時に押さえておかなければいけない意外と見落としがちな注意事項もある。今回はインターン生を採用する際の注意点をまとめておくこととする。
※  「インターンシップ」の定義は、「在学中、卒業直後の学生が、自分の専攻や将来のキャリアと関連した就業体験を一定期間行うこと」
● インターン生の法的地位と労働関係法規の適用
  インターンシップによって就業する学生が「労働者」(労働基準法9条)に該当する場合は、労働関係法規が適用される。賃金などの労働条件について、労働基準法や最低賃金法等の労働基準関係法令が適用されるとともに、実習中の事故に関しては労災保険法の適用がある。
  この点について行政通達上は、「一般に、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者に該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生の間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられる」(旧労働省平成9年9月18日基発第636号)、とされている。
  とはいえ、インターン生が労働者に該当しない場合も、労災保険の適用の有無にかかわらず、企業が学生に対して安全配慮義務を負う必要があり、企業内での事故に対して過失が認められれば損害賠償の責任が発生するということは理解しておく必要がある。
● 企業に損害が生じた場合への備え
  万が一の事故の場合に企業やインターン生の負担をできる限り軽減するため、傷害保険に加入するなどしてリスクに対する備えをしておく必要がある。アルバイトとして労働契約を結び、賃金を支払っている場合は労災保険が適用されるが、そうではない場合については、企業等または学生個人が一般の傷害保険等で個別に対応する必要がある。インターンシップを対象とした民間の保険商品もあり、通常より保険料が安いものもあるので検討したい。
  逆にインターン生が就業中に企業や第三者に生じさせた損害をカバーする賠償責任保険についても検討すべきといえる。企業に生じる損害額が大きく、学生が損害を賠償することが不可能な場合も考えられるからである。また、企業としては、企業秘密や個人情報の漏洩を防止するために、守秘義務等の重要な内容を説明した上で学生に誓約書を提出させておくとさらに事故の抑止効果も高まる。
  インターン生の採用であっても正社員を採用するときと同じように企業には大きな責任があるということを強く認識し、様々なリスクに対してできる限りの対策を講じておく必要がある。
参 考 : 経済産業省 成長する企業のためのインターンシップ活用ガイド
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2014.11.10
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