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所得税調査、6.8%の実地調査で申告漏れ金額の5割把握
● 59万件から8,216億円の申告漏れ所得を把握
  国税庁によると、個人に対する今年6月までの1年間(平成25事務年度)の所得税調査実施件数は、前年度(約68万2,000件)に比べ31.8%増の約89万9,000件行われた。そのうち、約66%に当たる約59万件から約8,216億円(同8,578億円)の申告漏れ所得を見つけた。その追徴税額 は前年度比1.9%増の1,020億円。1件平均91万円の申告漏れに対し11万円を追徴した。
  実地調査における特別調査・一般調査件数(高額・悪質な不正計算が見込まれるものを対象に行う深度ある調査)は、前年度からほぼ横ばいの約4万6,000件、うち約85%にあたる3万9,000件から総額約3,702億円の申告漏れ所得を見つけ、665億円を追徴。調査等件数では全体の5.1%に過ぎないが、申告漏れ所得金額全体の45.1%を占めた。調査1件あたりの申告漏れは810万円と、調査全体の平均91万円を大きく上回った。
● 近年の所得税調査は効率的・効果的な調査が特徴
  また、実地調査に含まれる着眼調査(資料情報や事業実態の解明を通じて行う短期間の調査)は、前年度比33.3%減の約1万6,000件行われ、うち約1万2,000件から436億円の申告漏れを見つけ、合計32億円を追徴。1件あたりの平均申告漏れは273万円となった。
  一方、実地調査と対する“簡易な接触”は、同36.8%増の約83万7,000件行われ、うち約54万件から4,078億円の申告漏れを見つけ、合計324億円を追徴。1件あたりの平均申告漏れ所得金額は49万円だった。
  実地調査トータルでは、前年度比1.4%減の約6万2,000件の調査を行い、うち約5万1,000件から4,137億円の申告漏れを見つけ、696億円を追徴している。つまり、実地調査件数(特別・一般調査、着眼調査の合計)は全体の6.8%に過ぎないが、申告漏れ所得金額としては全体の約5割(50.4%)を把握しており、高額・悪質な事案を優先して深度ある調査を的確に実施する一方、短期間で申告漏れ所得等の把握を行う効率的・効果的な所得税調査が実施されていることが裏付けられた。
  このように、近年の所得税調査の特徴は、高額・悪質と見込まれるものを優先して深度ある調査(特別調査・一般調査)を重点的・集中的に行い、一方で実地調査までには至らないものは電話や来署依頼による簡易な接触で済ませる調査方針にある。
  なお、業種別1件あたりの申告漏れ所得高額業種は、「風俗業」(3,329万円)がトップ、以下、「キャバレー」(1,972万円)、「バー」(1,226万円)がワースト3で昨年と同順位だった。
● 平成25事務年度の消費税調査では209億円を追徴課税
  一方、個人事業者に対する消費税の調査は、原則として所得税の調査等と同時に実施されるが、国税当局は、消費税のみ無申告とする納税者に対しては着眼調査(申告漏れ所得等の把握を実地により短期間に行う)や簡易な接触(文書や来署依頼による面接等で計算誤り等を是正するなどの接触)により適正な課税に努めている。
  国税庁が平成25事務年度に実施した消費税調査では、追徴税額は全体で209億円にのぼった。
  調査等の件数は、特別調査・一般調査は前年とほぼ同じ約2万5,000件、着眼調査は約7,000件(同約1万件)、簡易な接触は約4万4,000件(同約4万8,000件)だった。また、これらの調査等の合計件数は約7万6,000件で、そのうち申告漏れ等の非違があった件数は約7割の約5万2,000件となっている。
● 全体の約4割の実地調査件数で追徴税額の約8割を占める
  消費税の調査では、実地調査による追徴税額(調査等の対象となった全ての年分の合計で加算税を含む)は、全体で169億円(前事務年度172億円)で、このうち特別調査・一般調査によるものが155億円、着眼調査によるものが14億円、簡易な接触によるものが40億円となっている。この結果、消費税においても、実地調査件数は全体の約4割だが、追徴税額では全体の約8割を占めていることになる。
  1件あたりの追徴税額をみると、特別調査・一般調査が61万円、着眼調査が21万円で、実地調査合計では53万円、また簡易な接触が9万円となっており、調査等合計は1件当たり平均28万円となった。
  ※追徴税額は「本税+加算税」の合計額。
参照 国税庁:平成25事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2014.11.10
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