> 今週のトピックス > No.2924 |
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老後の“高収入で豊かな生活”は本当におすすめできる? | ||||||||
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![]() ● 介護サービスの自己負担の引き上げ
既にご存じの方が大半であろうが、来年から介護保険の自己負担が増える。
平成12年の制度スタート時から「一律1割負担」が介護保険の特徴の一つであったが、サービスの利用者が増加していることもあり、“一定以上の所得がある人”については平成27年8月から「2割負担」に引き上げられる。 一定以上の所得とは、収入から公的年金等控除などを差し引いた合計所得が年160万円以上であり、年金収入だけなら約280万円以上(単身の場合)で調整が行われるものだが、これに該当する人は被保険者の上位2割に相当する。 「1割から2割」と聞けば、それほどの負担増とは感じないが、お金を払う方からすれば倍の負担ということになる。平成15年4月に健康保険の負担が2割から3割に上がったことを覚えている方も多いだろうが、そのときの負担は「5割増」だった。 今回の介護保険の負担増は“倍”であり、該当してしまった人には非常に厳しい現実が突きつけられる。 ![]()
一定以上所得者の自己負担が1割から2割へ(被保険者の上位2割)・・・(平成27年8月より)
![]() ● 高額介護サービス費の負担上限も引き上げ
また、「高額介護サービス費」とは、同一月内に利用したサービスの1割(または2割)の自己負担の合計額が高額になった場合の軽減措置のことだ。この限度額が、現役並み所得者については月額37,200円から44,400円に増える。
44,400円を「なんとなく見たことがある」と感じる人も多いだろうが、これは公的医療保険の「70歳以上の高額療養費」の自己負担上限の44,400円(一般所得者)とまったく同じ数字だ。 医療保険に比べて高額介護サービス費の負担限度が低いということで、同じ基準に揃えたというのが実際のところであり、現役並み所得者とはおなじみの「課税所得145万円以上で、かつ一人暮らしで年収383万円以上、2人世帯で年収520万円以上」が目安となる。 これについても平成27年8月より引き上げが実施される。 ![]()
・高額介護サービス費の自己負担限度の上限額
(改正前)37,200円 →(改正後)44,400円・・・(平成27年8月より) ![]() ● 公的年金もターゲットにされている!?
既に記憶の片隅から消え去ってしまった感のある社会保障・税一体改革大綱(平成24年2月17日閣議決定)であるが、この中に「標準報酬の上限の見直し」や「高所得者の年金額の調整」などがある。これらは闇に葬り去られているわけではなく、しっかりと記録に残されており、「今後の検討事項」として息をひそめて再登場の時を待っている。
“標準報酬の上限の見直し”については、健康保険の上限121万円に比べて低水準(年金の場合は上限62万円)の最高額の引き上げが叫ばれている。これを引き上げるということは事業主負担の引き上げも行われるということであり、現行の保険料率17.474%(事業主負担8.737%:平成26年9月〜平成27年8月)であれば、給与1万円増に対して900円近くの追加の厚生年金保険料負担が発生する。他にも健康保険料や介護保険料なども加えなければならず、アルバイトやパートタイマーを多く抱える外食産業等を中心に大反対の声が聞こえてきそうだが、負担を増やす一つの方法として水面下で着々と議論が進んでいる。 前述した“高所得者の年金額の調整”は、「年金制度だけではなく、税制での対応等、様々な方法を含めて検討すべき」とされており、優遇されすぎとの批判のある公的年金等控除の見直し等、税制改正を巻き込んだ議論が進んでいる。 ![]()
標準報酬の上限の見直しや高所得者の年金額の調整も議論されている
![]() ● 老後に高所得となることは良いことなのか?
一般に、多くの日本人は勤勉であり、貯蓄意欲も高い。若いうちに苦労しても、老後は安心して暮らしたいと思い、個人年金保険などに加入する人も多いのだが、それによって高所得者とみなされれば、老後生活において様々な負担が増す。後期高齢者医療制度なども現役並み所得者とみなされることで保険料の負担は大きくなり、病院窓口での負担も1割から一気に3倍の3割負担となる。
「豊かな老後のために個人年金を検討してみませんか?」という声をよく聞く。これは「自分自身の将来への仕送りをしてみませんか?」と心に訴える勧誘であるが、老後に所得を増やすことは、反面、個人の社会保障コストの面からは有利なことではないともいえる。 個人年金だけではなく、コツコツ毎月保険料を支払い、楽しみにしていた生命保険の満期で一時所得が増えることでも結果は同じことだ。税金の負担はそれほどでもないが、社会保険の負担は増してしまう。 「老後に所得を増やす商品に入ることは不利なことではないのか?」と賢い消費者から聞かれた場合、明確に答えることのできる解を持っていないと、預貯金からの資金を移動させることは難しい。賢明な募集人の方々には顧客を納得させられるだけの理論武装をして、貴重なシルバーマーケットの資金がタンス預金とならないようにがんばって欲しいものだ。 ![]()
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2014.11.17 |
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