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法人税の申告漏れ総額、前年度比25%減の7,515億円
● 1件あたりの申告漏れ所得は829万円
  国税庁がこのほど公表した今年6月までの1年間(平成25事務年度)における法人税等の調査事績によると、悪質な不正計算が想定されるなど調査必要度の高い9万1,000法人(前年度比2.8%減)を実地調査した結果、うち約73%にあたる6万6,000件(同3.2%減)から前年度に比べ24.8%減の総額7,515億円の申告漏れを見つけた。追徴税額は1,591億円(同24.2%減)。1件あたりの申告漏れ所得は同22.6%減の829万円となった。
  実地調査件数は、改正国税通則法の施行に伴い、昨年度から、課税理由の説明などの原則義務化で事務作業量が増加し、1件当たりの調査期間が延びた影響が今事務年度も続いている。
  また、調査したうちの18.6%(不正発見割合)に当たる1万7,000件(前年度比1.6%減)が故意に所得を仮装・隠ぺいするなどの不正を行っており、その不正脱漏所得は前年度比20.8%減の2,184億円、1件当たりでは同19.5%減の約1,298万円となった。
● 業種別の不正発見割合は「バー・クラブ」が12年連続のワースト1位
  業種別(調査件数350件以上)にみると、「不正発見割合の高い10業種」では、「バー・クラブ」が47.3%で12年連続のワースト1位。「バー・クラブ」は、近年25年間で24回1位(唯一、平成13事務年度がワースト2位)という不名誉な記録を持つワースト業種の常連だ。以下、前年4位の「自動車修理」(不正発見割合29.8%)、同2位の「パチンコ」(29.0%)、同5位の「廃棄物処理」(28.4%)、同3位の「土木工事」(28.2%)の順で続く。
  また、「1件あたりの不正所得金額が大きい10業種」では、1位は前年2位でランク上位常連の「パチンコ」の5,373万円、2位は前年4位の「自動車・同付属品製造」(1件当たりの不正所得金額 3,348万円)、3位は同ランク外の「情報サービス、興信所」(2,532万円)、4位は同ランク外の「電子機器製造」(2,511万円)、5位は同ランク外の「建売、土地売買」(1,980万円)と続く。不正発見割合でワースト1位の「バー・クラブ」は1,473万円でランク外だった。
● 消費税は4万9,000件から税額378億円を追徴
  一方、法人の消費税については、法人税との同時調査等として約8万7,000件(前年度比1.9%減)の実地調査を行った結果、消費税の非違があった法人は4万9,000件(同1.7%減)、その追徴税額は加算税額61億円を含む378億円(同20.3%減)だった。調査1件当たりの追徴税額は44万円(同18.7%減)となった。なお、調査による追徴税額には地方消費税(譲渡割額)が含まれている。
  また、源泉所得税等については、平成25事務年度は11万7,000件(前年度比14.0%減)の源泉徴収義務者について調査を行い、このうち、源泉所得税の非違があった源泉徴収義務者は3万2,000件(同4.2%減)で、その追徴税額は加算税額26億円を含む254億円(同11.0%減)だった。追徴税額の本税額では、「給与所得」が172億円でトップ、次いで「非居住者等所得」が30億円、「報酬料金等所得」が17億円と続いている。
参照 国税庁:平成25事務年度 法人税等の調査事績の概要
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2014.11.25
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