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保険外併用に「患者申出療養(仮称)」制度が創設の運び
● 患者自ら申し出ることで保険外の治療が受けやすくなる
  幅広い分野にわたる規制改革において、医療分野で常に論点となるのが「保険外併用療養」、いわゆる禁止されている混合診療を例外的に認めるしくみである。このしくみの大枠については、2006年より保険外併用療養費として制度的に位置づけられているが、これをどこまで広げるかについては議論が多い。
  今年6月、政府は閣議において、この保険外併用療養に新たなしくみを創設することを決めた。それが「患者申出療養(仮称)」制度だ。これは、国内未承認薬等の使用や国内承認済みの医薬品等の適応外使用(評価療養と位置づけられている)を、保険外併用療養として迅速に進めることを目的としたしくみである。
  現行の評価療養については、保険外併用療養とするか否かの決定に向けて医療機関が申請を行ない、国が安全性、有効性、実施計画の内容などを審査してきた。この場合、承認までおおむね半年程度かかる。すでに評価療養として認められているものであっても、最初に申請した所以外の医療機関(協力医療機関)が実施する場合は、そのつど協力医療機関が「安全に実施できるか」をやはり審査する。この場合でも承認まで1ヶ月程度かかる。
  今回提案された患者申出療養(仮称)では、患者自身が審査に向けた申し出を行なうことが可能となる。申し出る先は「臨床研究中核病院」。これは、@安全に実施できる体制が整っており、A質の高い臨床研究を企画・立案する能力が高く、B適切な実施計画を速やかに作成することが可能であると認められた病院で、現在全国で15ヶ所が承認されている。
  患者から臨床研究中核病院を通しての申請が行われることにより、国の審査期間は大きく短縮される。初めての治療を実施する場合で、承認まで原則6週間。すでに実施されている治療を患者の身近な医療機関で行なうというケースでは、原則2週間となる。患者にとっては迅速な治療が可能となるわけだ。
● 保険外の治療を申し出たら「患者側の自己責任」になるのか
  この患者申出療養(仮称)については、すでに中医協総会を経て、社会保障審議会医療保険部会でも議論が行われた。その後、来年の次期通常国会に関連法案が提出され、制度の具体的運用については、引き続き中医協において検討を行なうことが予定されている。
  実は、この患者申出療養(仮称)については前身がある。今年3月の規制改革会議で提言された「選択療養制度」だ。これは保険外併用療養費の対象としてリスト化された診療とは別に、個別の患者の自己選択によって(一定の手続き・ルールのもとに)保険外併用を認めるというしくみである。患者の自己選択を起点とするという点では患者申出療養(仮称)と枠組みはほぼ同じといえる。
  ただし、この選択療養制度は、日本医師会をはじめ国内最大の患者団体である「日本難病・疾病団体協議会」から反対声明が出されるなどの経緯により実現には至っていない。患者団体などが危惧するのは、医師と患者側の情報格差が大きい中で、安全性が十分に担保されない点や事故が起こった場合に「患者側の自己責任」で処理される可能性だ。
  ちなみに、申し出側の「自己責任論」については、患者申出療養(仮称)を議論する医療保険部会でも懸念の声が上がっている。法案化に向けては、そもそも混合診療の大幅解禁が国民のニーズと合致するのかどうかという議論も含め、まだ紆余曲折は続きそうだ。
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。
  
2014.12.11
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