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米ムーディーズ、日本国債を3年ぶりに格下げ
● 日本国債、上から5番目の「A1」に格下げ
  アメリカの格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、今月1日、日本国債の格付けを「Aa3」から「A1」に1段階引き下げたと発表した。日本国債の格下げは2011年8月24日にそれまでの「Aa2」から「Aa3」に下げて以来、3年3か月ぶりである。
  格付けとは各国が発行する国債に対する信用力を示すもので、投資家が国債に投資した資金がキチンと返ってくるか、利息はキチンと支払ってくれるかを格付け会社が評価している。
  ムーディーズの格付けは以下のとおりである(格付けAを抜粋)。
格付け 主な国債 評価内容
Aaa 米国、ドイツ、オーストラリア、カナダ 信用力が最も高いと判断され、信用リスクが最低水準にある債務に対する格付け
Aa1 英国、フランス、香港 信用力が高いと判断され、信用リスクが極めて低い債務に対する格付け
Aa2 クウェート、カタール
Aa3 中国、韓国、台湾
A1 日本、イスラエル、エストニア 中級の上位と判断され、信用リスクが低い債務に対する格付け
A2 ポーランド、スロバキア
A3 マレーシア、メキシコ

注: ムーディーズは「Aa」から「Caa」までの格付けに、1、2、3という数字付加記号を加えている。1は、債務が文字格付けのカテゴリーで上位に位置することを示し、2は中位、3は下位にあることを示す。

出典:ムーディーズ・インベスターズ・サービスの資料をもとに鰍ePウィム社作成

● 「経済政策のかじ取り難航」と判断
  日本国債格下げの理由は、今年4月の消費税増税で景気が冷え込み、財政再建と景気回復を両立させる経済政策のかじ取りが難しくなったと判断したからだ。日本政府は、2015年度に基礎的財政収支の赤字を半減し、2020年度には基礎的財政収支を均衡させることを目標としている。消費税増税はその目標を達成するための重要な手段であったが、消費税再増税が延期されたことで、実現が難しい状況となってしまった。
  消費税の引き上げ後、GDP(国内総生産)の成長率は実質、名目とも縮小し、景気が後退したことも格下げの理由の一つである。
● 格下げが私たちの生活に与える影響
  格付けが引き下げられることで、日本の国債の信用力が低下する。投資家は格付けが下がった国債を保有するより、リスクの低い国債に買い替えることになる。よって、日本の国債を売り、結果、円安となる。また、国債が売られることで価格が急落し、国債の利回りが上昇し、金利は上昇する。財務省によると、国債の金利が2%上昇すると借金返済に充てる予算が3年後には8兆円程度にまで膨らみ、財政がさらに圧迫されることになる。住宅ローンや企業の借入金の金利も国債金利に連動するため、金利上昇が生活に及ぼす影響は大きい。
  日本銀行が金融緩和のために国債を大量に購入していることから、長期金利は低水準にある。今後、日本の景気回復が遅れ、消費再増税が再度延期された場合には、信用力がさらに低下し、格付けが再度引き下げられることもありえる。
  一日も早い景気回復、財政再建のメドを立て、地に落ちた信用を回復して欲しいものである。
  
伊田 賢一 (いだ・けんいち)
株式会社FPウィム 代表取締役、株式会社WINKS 代表取締役
CFP®認定者、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
証券会社3社に勤務の後、2002年に独立系FPとして活動開始。独立系FP会社役員を経て、2007年に相談業務を中心としたFP会社として株式会社FPウィムを設立。2010年には多角的なFPサービスの提供を目的とした株式会社WINKSを設立。相談者の心の内の心配ごとをいち早く見つけ、個々人の夢や目標に応じたマネープランニングを提案し、実行援助、管理、見直しに至るまで包括的なサービスを提供している。個人や企業の相談は月平均30件、講演、セミナーも年間60件を超えるなど、幅広いファイナンシャル・プランニング業務を行っている。さいたま朝日に「家計の知っ得」、ホケモンに「保険の基礎知識」などを連載中。おもな著書に「うかる!FP技能士2級」「うかる!FP技能士3級」「うかる!証券外務員2種」などがある。
NPO法人日本FP協会 埼玉支部副支部長、 マネーカフェさいたま代表、埼玉県金融広報委員会アドバイザー。
株式会社FPウィム http://fpwim.com/
  
  
2014.12.15
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