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オリンピック視野に、ゴルフ場利用税廃止問題が浮上?
● 安倍首相もゴルフ利用税廃止の検討を指示
  ゴルフ場利用税は、地方税法に基づき、ゴルフ場の利用について、1日当たりの定額で、ゴルフ場の所在する都道府県が課する税金である。そのゴルフ場利用税について、2020年の東京オリンピック開催が決定し、ゴルフがオリンピックの種目にもなっていることから、廃止問題が浮上している。活躍が期待されるゴルフ競技に課税することはその発展を阻害するという批判の高まりに加え、消費税との二重課税だという主張も根強い。
  昨年の税制改正時にもスポーツ行政を所管する文部科学省が廃止要望を提出して論議になったが、関係者からは今年こそ、という声が高まっている。先月の衆議院解散前の国会では、下村文科相はもとより麻生財務相も存続に疑問の立場を表明。11月4日の参議院予算委員会では、安倍首相もゴルフ場利用料金のなかで税金の比率が高くなっている実態を認めて、高市総務相に検討を指示するなど、廃止に向けた足慣らしが進んでいた。
  ゴルフ場利用税は、ゴルフ場の規模や整備状況によって等級が決められ、利用者1人1日当たり300円から1,200円の範囲で課税(標準税率800円)されている。ただし、18歳未満や70歳以上、障害のある人、国民体育大会に出場する選手、学生または生徒等とこれらの者を引率する教員が教育活動として行う場合は非課税になっている。
  なお、ゴルフ練習場の利用は、課税対象とはならない。
● 消費増税延期で廃止の検討も先送りか?
  今回、東京オリンピック開催を視野にゴルフ場利用税廃止問題が再燃したわけだが、一方で、消費税率が10%に引き上げられた場合は「地方税も増えるので(廃止するには)ひとつのタイミング」(麻生財務相)とみられていた。
  しかし、消費税率引上げが1年半延期されたことで、廃止の検討も先送りになる公算が強い。また、同税は道府県税だが、税収の7割がゴルフ場所在の市町村に交付されるため、地方自治体は廃止反対の立場をとっている。
  日本ゴルフ協会の調べでは、ゴルフ競技人口は平成6年の1,450万人をピークに減少を続け、平成22年には1,033万人まで落ち込んでいる。同協会も、「ゴルフ場利用税の明確な課税根拠は、もはやない。ゴルフ場所在の市町村にとって貴重な財源…これが唯一の理由だろう。本年4月からの消費税率引上げにより、ゴルフに対する『税の不公平』はさらに拡大している」として、スポーツに対する課税であるゴルフ場利用税の早急な廃止を要望している。
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2014.12.22
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