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介護保険外の「お泊まりデイ」に届出制導入
● 在宅介護への流れのなか、介護者のレスパイトに貢献
  来年度に向け、介護保険サービスの運営上の基準を改定するための案が示されている。その中で、異例とも言える「介護保険外」の項目がプラスされた。対象となったのは、通所介護事業所が提供している夜間の宿泊サービス、要するに「お泊まりデイサービス」(以下、お泊まりデイ)だ。この保険外サービスについて、利用者保護の観点から行政への届出制や情報公表が推進される。
  厚労省が社会保障審議会・介護給付費分科会(8月27日)に提示した資料によれば、介護保険の通所介護事業所のうち約1割が「お泊まりデイ」を実施している。特に小規模事業所ほど実施の割合が高い。小規模通所介護の介護報酬が引き下げられる可能性がある中、収益改善を図るべく、保険外で自由な価格設定のきく「お泊まり」への参入が強まることも考えられる。
  背景には、やはり家族介護者のレスパイト(休息)ニーズの高まりがある。高齢者のみの世帯が増える中で、家族介護者自身も高齢化し、「施設・病院から在宅へ」という流れも同時に強まっている。在宅における介護倒れのリスクが高まる中では、たとえ短期間でも「昼夜通して要介護者から離れる」ことは重要なポイントだ。
  介護保険サービスでは、施設の短期入所(ショートステイ)などが整備されているが、地域によっては十分な資源確保が間に合っていない。いきおい介護保険外で資源不足を穴埋めする流れも強まっている。
● 保険外サービスだからこそ、利用者保護の観点から届出制導入へ
  中でも期待が高まるのが、この「お泊まりデイ」だ。お泊まり自体は介護保険外だが、日中のデイで介護保険事業の指定を受けている点で利用者側の信頼はある程度担保できる。また、日中にデイを利用している人であるなら、その事業所の職員とのなじみの関係も築かれており、本人の心理的な抵抗感などもカバーしやすい環境にある。実際、お泊まりデイの利用経緯としては、「ケアマネジャーによる提案」よりも「家族からの要望」が圧倒的に多い。
  ただし、日中デイの事業者指定があろうとも、夜間体制が介護保険外となれば人員配置などの対応は千差万別となる。過去のグループホーム火災などの例を見ても、夜間就寝中の災害からの避難体制なども大きな課題だ。こうした利用者保護に向けた課題が放置されてしまうと、保険内サービスである「日中のデイ」への信頼も揺らぎかねない。といって、「お泊まり」サービスも保険事業に含めるのは、ひっ迫する保険財政との兼ね合いから、国としてもおいそれと踏み込むことは難しい。
  そこで指定制ではなく届出制を導入し、同時に介護サービス情報公表制度を活用して、利用者自らが必要な情報をネット上で入手できるようにする。また、「お泊まり」サービスを提供したことによって事故が発生した場合には、市町村や利用者家族などへの連絡や損害賠償の措置を義務づけるなど、日中のデイと同じ対応を進めることとした。なお、国は運営に際してのガイドライン案を策定中で、これに基づいて各事業所が設備状況などを利用者に示す際の様式も整えようとしている。
  現状においては、特養ホームなどが運営するショートステイなどと比較して、宿泊居室の面積やプライバシーの確保が十分に進められていないケースも認められる。今回の改定により利用者保護の進ちょくは期待されるものの、利用者側としても必要な情報をきちんと確認するなどの心得が必要といえる。
※ お泊まりデイサービスとは、介護保険法に基づいた通所介護事業サービスに加えて、その利用者を対象に夜間に介護保険適用外の宿泊サービスを提供する事業形態のこと(お泊まりデイサービス協会HPより)。
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。
  
2014.12.25
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