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小規模宅地等の特例、遺産分割には要注意
● 小規模宅地等の特例、平成27年より限度面積拡大
  平成27年1月1日以後に相続の開始のあった被相続人に係る相続税について、「小規模宅地等の特例」が改正される。
  小規模宅地等の特例とは、被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等がある場合に、一定の要件の下で、遺産である宅地等のうち限度面積までの部分について、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額する特例である。
  改正点は大きく2つあり、まず居住用の宅地等(特定居住用宅地等)の限度面積が240uから330uに拡大される。また、居住用と事業用の宅地等を選択する場合の適用面積について、特定居住用宅地等330uと特定事業用等宅地等400uの完全併用が認められるようになる(貸付事業用宅地等について特例の適用を受けない場合に限る)。
● 「小規模宅地等の特例」と遺産分割
  平成27年からは相続税の基礎控除が引き下げられるため、今後ますます、小規模宅地等の特例が重要となることは間違いない。ただし、適用に当たっては慎重な取扱いが必要な場合がある。
  例えば、被相続人の財産が、被相続人が居住している土地(評価額=1億円)だけであるとする。相続人は長男と次男の2人で、長男は被相続人と同居、次男は自分の持ち家に居住し、被相続人とは別居している。つまり、長男は小規模宅地等の特例の適用が可能だが、次男は適用不可で、土地以外の遺産もない、といった場合、どのように遺産分割すればよいだろうか(便宜上、限度面積はないものとする)。
  全体の相続税を最も少なくしようと思うと、長男が土地を全て相続すれば、相続税額の算出において小規模宅地等の特例を適用することができる。しかしそれでは次男に相続できる財産がなく、普通は納得しないだろう。
  では、仮に長男と次男が公平に、5,000万円ずつに土地を分割して相続すれば、うまくいくだろうか。
  諸事情はおいておくとして、金額面だけに絞って考えたとしても、長男・次男ともに5,000万円を相続するため、民法上は全く公平な分割となるが、「小規模宅地等の特例」適用の有無により、両者の相続税の納税額を考慮すると、次男の納税負担が長男に比べて大きくなってしまい、次男側に不公平感が残る恐れがある。
  このように、小規模宅地等の特例を考慮すると、遺産分割が困難になるということが実務上は往々にして起こる。そうならないためには事前に土地以外に相続できる財産を用意することが重要と言える事例であるが、そのような準備がなければ、最終的には相続税が少なくなる方を取るのか、手取り財産額が平等になる方を取るのか、相続人が話し合って決めることになる。
● 申告時点で未分割なら、分割見込書の提出を
  なお、小規模宅地等の特例は、相続税の申告期限までに遺産分割が行われていない財産については適用できない。ただし、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出しておき、相続税の申告期限から3年以内に分割された場合には、特例の適用を受けることができる。この場合、分割が行われた日の翌日から4ヶ月以内に更正の請求を行うことになる。
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村田 直(むらた・ただし)
マネーコンシェルジュ税理士法人
税理士
大阪府茨木市出身。大学卒業後、会計事務所勤務を経て現法人へ。平成22年3月税理士登録。法人成り支援や節税対策・赤字対策など、中小企業経営者の参謀役を目指し、活動中。年に数回の小冊子発行など、事務所全体で執筆活動にも力を入れている。
マネーコンシェルジュ税理士法人
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2015.01.05
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