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今春の介護報酬は大幅マイナス改定か!?
● 財務省はマイナス6%以上を要請
  今春、介護サービスの公定価格である介護報酬の改定を控える介護保険は、その検討が最終段階に入っている。昨年末の12月19日の社会保障審議会介護給付費分科会では平成27年度介護報酬改定に関する審議報告(案)が事務局から示された。平成27 年度介護報酬改定の基本的な考え方として以下の3項目が打ち出されている。
  (1) 中重度の要介護者や認知症高齢者への対応の更なる強化
  (2) 介護人材確保対策の推進
  (3) サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築
  厚労省としては、介護保険給付は要介護3以上を中心として、軽度は市町村(地域支援事業)やインフォーマルセクターに託したいという考えだ。また団塊世代が後期高齢者となる2025年に向けて給付総額も抑えようとしている。
  具体的な金額は予算編成の過程次第ではあるが、消費税率引き上げ延期のこともあり、マイナス改定は避けられない見通しだ。とくに大幅なマイナス改定が現実味を帯びてきたのは、昨年10月8日に財務省が開催した国の財政を議論する審議会(財政制度等審議会)の提案だ。
  「介護サービス全体の平均収支差率は+8%程度で、これは中小企業の水準(+2〜3%弱)を大幅に上回っている。介護報酬基本部分については、少なくとも中小企業並みの収支差となる6%程度の引き下げが必要だ」
  そして「報酬水準を約1%引き下げると、国民負担は年間約1,000億円軽減される」と国民に理解を求めた。
  昨年末の選挙後、塩崎厚労大臣は「介護報酬の引下げの方針を固めたという事実はない」とコメントするが、消費税に関係して「予算編成の過程の中で考えていく」と含みを持たせている。介護報酬は平成21年度から連続でプラス改定が続いている。マイナス改定となれば、その流れにブレーキがかかることになる。これは小泉政権時代、「骨太の方針2006」で社会保障費が毎年度2,200億円減された影響から、医療・介護における様々な現場での取り組みが萎縮してしまった当時を思い起こさせるものだ。
● 特養やデイサービスに厳しい改定が予想される
  財政制度等審議会は、とくに収支差が10.6%の通所介護(デイサービス)と、同じく8.7%の介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)について適正化を要請している。
  財務省の資料によると、「特別養護老人ホームにおいては、良好な収支差の結果、巨額の内部留保がある」(「社会保障@(総論、医療・介護、子育て支援)」平成26年10月8日(水)財務省主計局)と厳しい。さらに、「多床室の室料についても利用者負担を検討すべき」として、事業者のみならず経済的なゆとりのない高齢者にとっても大きな影響を与えそうだ。
  デイサービスについては、11月13日の厚労省介護給付費分科会で「通所介護の報酬・規準について(案)」が事務局より示された。その内容によると、生活機能の向上を目的とした機能訓練が評価される。しかし機能訓練加算の算定状況などから考えると、この改定に対応できる事業者は全体の3割ほどに留まりそうだ。
  
安藤 啓一 (あんどう・けいいち)
福祉ジャーナリスト。
千葉県出身。大学卒業後、新聞や雑誌記者を経験した後、介護福祉誌の編集長を経てフリーに。パラリンピックや障がい者支援、高齢者介護、医療経営、子育てなどの分野を中心に取材活動をしている。医療、介護と縦割りになりがちな情報を、当事者の目線にこだわり、地域発想、現場重視で「横串」編集することを心がける。鳥取県の「介護ガイドAi」(鳥広マガジン)は、編集を担当。介護テキスト、医療経営誌、介護専門誌などで執筆している。また3人娘の父親として、子育て支援活動にも取り組む。
  
  
2015.01.08
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