>  今週のトピックス >  No.2954
地域包括ケア時代にかかりつけ医の意識は?
● 介護保険に係る項目は「重要」という傾向
  2014年12月17日、日本医師会が「2014年度診療報酬改定に係る診療所調査結果――かかりつけ医機能と在宅医療を中心に――」を発表した。14年度報酬改定といえば、社会保障制度改革の一環である地域包括ケアシステムの構築に向けて様々な布石が打たれている。特に、病床機能の再編により急性期を脱した患者がどんどん在宅へと移る中、訪問診療の提供や医療・介護の連携など在宅医療・介護の基盤整備が大きなポイントとされてきた。
  そうした状況下で重要なカギを握るのは、やはり地域のかかりつけ医である。そのかかりつけ医が地域包括ケアシステムの構築に向けて、どのような意識を携えているのか。今回発表された調査結果の資料を見ると、かかりつけ医が地域包括ケアへ向けて前向きに変わってきている点と、いまだ課題となっている点の両方が浮かび上がってくる。
  まず、かかりつけ医にとって(もしくは、かかりつけ医機能として)、「重要である」と考えている項目と「負担・困難である」と考えている項目があがっている。もっとも重要度の高い項目は「受診勧奨や健康状態の管理」(59.6%)だが、興味深いのは、その次に「(介護保険における)主治医意見書の作成」(56.1%)が多い点だ。また、「介護保険に係る相談」も、重要と考えている割合は45.4%と半数近くに達している。
  これら介護保険に係る項目については、「負担・困難」という割合は低く、「重要かつ比較的対応可能」という傾向が見えてくる。これだけを見ると、地域包括ケアの1つの軸である医療・介護の連携という課題は十分にクリアできる水準にあるという見方もできる。
● 在宅医療については「重要」だが「負担・困難」
  一方で、気になる点もある。「負担・困難」という回答が目立つ項目の1つに、「在宅患者への24時間の対応」(69.4%)がある。しかも「重要」と考えている割合は低い(21.7%)。また、「在宅医療の提供」に関しては「重要」と考えている割合は40.2%に達しているが、「負担・困難」と考えている割合も40.9%と比較的高い。ちなみに、「在宅医療を行なう上で大変なこと」という調査項目を見ると、「緊急時の対応」や「自身の体力」という回答が上位にあり、そのあたりの厳しさが上記の回答につながっていると見られる。
  さらに、介護保険関連に絞った項目を見ると、「介護保険によるリハビリテーションの提供」は、「負担・困難」の割合が61.4%に達し、対して「重要」の割合が16.9%にとどまっている。確かに、介護保険によるリハビリテーションは、かかりつけ医の業務範囲外ととらえるのが自然かもしれない。だが、医療保険によるリハビリテーションの提供日数に上限が設けられる中で、患者側として「切れ目ないリハビリテーションを受けたい」というニーズが高いことを考えれば、身近なかかりつけ医による介護保険リハビリテーションの必要度は今後も高まってくるだろう。
  こうして見ると、介護側との連携を意識する医師が増える一方、自らが「在宅での療養」を下支えする医療資源を整えるまでには至っていない状況が垣間見える。そもそもかかりつけ医となる開業医の高齢化や後継者不足という構造的な問題もある中で、訪問診療や緊急時の対応など、在宅患者の重度化ニーズを支える基盤は決して磐石とは言えない。そのあたりを見据えた上で、次期診療報酬改定でどこまでかかりつけ医改革が進むのかが注目される。
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。
  
2015.01.15
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