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厚生労働省、長時間労働対策を強化へ
● 月100時間超えの残業をしている事業場は見直しが必要
  厚生労働省は2015年1月から新たな長時間労働対策に取り組むことを昨年末に発表した。2014年6月に「過労死等防止対策推進法」が成立し、厚生労働省では、2014年9月に厚生労働大臣を本部長とする「長時間労働削減推進本部」を設置している。
  この長時間労働削減推進本部においては、「過重労働等の撲滅」「働き方改革・休暇取得促進」を2つの柱としている。今回、過重労働等の撲滅の具体的な内容として、特に月100時間超の残業が行われている事業場等に対して、監督指導を徹底することをはっきりと表明しているのは注目すべき点である。対象となる可能性のある企業にとっては早急に対応しなければならず、業界によっては勤務体制等、抜本的な見直しをしなければならない企業も意外に多いかもしれない。
● 過重労働撲滅のための具体的な取組
  1.100時間超の残業が行われている事業場等に対する監督指導の徹底
    (1)時間外労働時間数が1か月100時間を超えていると考えられる事業場
    (2)長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場
    上記(1)(2)を対象とした、労働基準監督署による監督指導(立入調査)の徹底
  監督の結果、違反・問題等が認められた事業場に対しては、厚労省が是正勧告書等を交付し、指導する。さらに、法違反を是正しない事業場は、送検も視野に入れて対応するという(送検された場合は、企業名等を公表)。
  2.インターネットによる情報監視
  厚生労働省がインターネット上の求人情報等を監視し収集し、その情報(※)を労働基準監督署による監督指導等に活用(平成27年度からの本格実施に向けて、同年1月から試行的に実施)
高収入を謳うもの、求人を繰り返し行うもの等の過重労働等が疑われる求人事案に着目し、厚生労働省が収集した過重労働等の労働条件に問題があると考えられる事業場に係るもの
  3.メンタルヘルス対策の強化
(1) ストレスチェック制度の周知(改正労働安全衛生法により平成27年12月から施行)
(2) ストレスチェック及び面接指導等を行う医師、保健師等に対する研修
(平成27年度からの実施に向けて、同年1月から準備)
● 都道府県に「働き方改革推進本部」を設置
  もう1つの柱である、働き方改革・休暇取得促進については、都道府県労働局に「働き方改革推進本部」を平成27年1月に設置し、企業の自主的な働き方の見直しを推進するとのこと。具体的な取組としては、下記のとおりである。
@ 地域の経済団体・労働団体のトップ等に対し、働き方改革に対する協力を要請
A 労働局長や労働基準部長が、地域のリーディングカンパニーを訪問
企業トップに対して、働き方改革に向けた取組を働きかけ
働き方・休み方コンサルタントによる企業に対する助言等の支援
B 企業における先進的な取組事例の収集、周知(厚労省によるポータルサイトが新規開設される予定)
C 事業主団体主催の会合等あらゆる機会を通じた気運の醸成
  厚生労働省は上記のとおり、長時間労働対策について本腰を入れて取り組む姿勢を見せており、企業としても労働時間削減に向けて具体的な対策をしなければならないだろう。
  今後、人事労務担当者及び現場のリーダーにもかなり負荷がかかることになるが、やはり鍵は本気で改革するという経営トップの意思であるので、これを機会に社内でも新たな労働時間削減プロジェクトチームをつくってみること等をおすすめしたい。
参 考 厚生労働省「今後の長時間労働対策について」
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2015.01.19
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