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支払調書への契約者変更情報の記載が義務化へ
● 契約者変更情報が支払調書へ反映されるように
  昨年12月30日に発表された平成27年度税制改正大綱によれば、生命保険契約等における契約者変更の情報が、将来的に支払調書に反映されるようになることとなります。
  大綱には次のとおり記載されています。
生命保険契約等の一時金の支払調書等について、保険契約の契約者変更があった場合には、保険金等の支払時の契約者の払込保険料等を記載することとする。
保険会社等は、生命保険契約等について死亡による契約者変更があった場合には、死亡による契約者変更情報及び解約返戻金相当額等を記載した調書を、税務署長に提出しなければならないこととする。
生命保険金等の支払調書について、保険契約の契約者変更があった場合には、保険金等の支払時の契約者の払込保険料等を記載することとする。
  これらの改正は、平成30年1月1日以後の契約者変更について適用するとしています。
● 契約者変更があっても解約返戻金・払込保険料情報を税務署が把握
  上記の改正の趣旨と思われることを簡単に述べると次のとおりとなります。
@ 従来、契約者変更があった場合でも、満期・死亡保険金等の支払いが行われた際の支払調書には、基本的に払込保険料の全額が支払調書に記載されていたが、保険金支払時の契約者の払込保険料の記載に変更することにより、契約者による実質保険料負担額を税務当局が把握しやすくなること。
A 契約者死亡時には、その時点の解約返戻金相当額が相続税の課税対象となるが、従来、その情報は相続人による申告や相続人に対する調査等によらねば情報が得られなかった。改正によって新規に支払調書が作成されることとなり、税務当局がその情報を把握しやすくなること。
B これらの情報提出は、平成30年1月1日以後の契約者変更について適用されること。
● 税法の趣旨にのっとった情報提供が行われることに
  従来、契約者変更情報は、保険金等の支払いではないため、支払調書の作成対象ではありませんでした。そのため、税務当局は、これらの情報を基本となる申告者からの情報提供や、税務当局による調査等によってしか、把握することができませんでした。これらの課題を解決し、税法にのっとった適切な課税が行われるための情報提供がされるようになるということです。
  大綱がこのまま国会を通過すれば、平成30年1月1日以後の契約者変更について、保険金等支払前の契約者変更の情報を税務当局が把握するようになります。
  税法の趣旨にのっとった適切な申告は当然のことでありますが、このことを踏まえたお客様への情報提供には留意したいものです。
※平成27年度税制改正大綱については、国会を通過するまでは確定事項ではありません。
  
木下 直人(きのした・なおひと)
社会保険労務士、CFP、1級DCプランナー、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、保険コンプライアンス・オフィサー2級
  東京大学農学部卒。保険業界勤務。保険税務や社会保険・ライフプランなどの資材作成・研修講義はわかりやすく、面白いとの定評がある。
  
2015.01.26
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