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企業側に有給休暇の時季指定義務化へ
● 年次有給休暇の取得促進が狙い
  政府が通常国会に提出する年次有給休暇に関する労働基準法改正案の内容が明らかになった。企業に対し、従業員が保有している年次有給休暇の一部について、取得する時季を指定することを義務づける予定であるが、改正案が実行された場合、企業側の負担は大きくなる。
  今回の改正案は、年次有給休暇の取得率を向上させることを狙いとしているが、課題も多い。特に中小企業にとっては、そもそも年次有給休暇を消化することができないような環境にあることも多く、年次有給休暇の取得する時季を企業側に義務化しても機能しないおそれもある。また労働基準法に規定された場合であっても、その内容に違反するとどのようなペナルティになるのかも大事なポイントである。
  さて、肝心の改正案の詳細について、今回の報告書骨子案では下記のとおり(原文をそのまま掲載)記載されており、日数は具体的に書かれていないが、大体の方向性はつかむことができる。
今後の労働時間法制の在り方について(報告書骨子案)

<年次有給休暇の取得促進>
年次有給休暇の取得率が低迷している実態を踏まえ、年次有給休暇の取得が確実に進むよう、年●日間の年次有給休暇の時季指定を使用者に義務付けることが適当。
具体的には、労働基準法において、計画的付与の規定とは別に、有給休暇の日数のうち年●日については、使用者が時季指定しなければならないことを規定することが適当。
ただし、@年●日間以上の年次有給休暇の計画的付与を行っている場合、A当該年に新たに発生した年次有給休暇の▲割以上の日数を取得した場合、使用者は上記の義務を果たさなくてよいものとして取り扱うことが適当。
なお、使用者は上記の時季指定を行うに当たっては、@年休権を有する労働者に対して時季に関する意見を速やかに聴くよう努めなければならないこと、A時季に関する労働者の意思を尊重するよう努めなければならないことを省令に規定することが適当。
  上記の通り、年次有給休暇制度の計画的付与制度をある程度実施している企業の場合、さらに時季を指定して取得させる義務は果たさなくてもよい、ということになりそうである。
● 取得しやすい時季を指定することで効率的に
  今回の改正案については、企業側にとってはあまり好ましくない内容であると捉えている方も多い。しかしながら、これを機会に労使が一体となって、効率的な経営を目指すことを第一に考えて、業務の生産性を高めることができれば、それは望ましい姿である。
  年次有給休暇の取得については、そもそも取得すること自体にためらいがある人が多く、取得申請をしていないという労働者がかなり多いのも事実である。企業側が年末年始や夏休み、その他連休に追加して指定する、または比較的閑散期にあたる時季に指定することができれば、労働者としても気兼ねなく休むことができるようになり、心身ともにリフレッシュすることにつながるのではないだろうか。
参 考 厚生労働省 第122回労働政策審議会労働条件分科会資料
資料No.1 今後の労働時間法制等の在り方について(報告書骨子案)
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2015.02.02
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