>  今週のトピックス >  No.2964
ふるさと納税の特例控除限度額を2割に引き上げ
● 安倍政権の重点課題である地方創生を推進
  平成27年度税制改正には、安倍政権の重点課題である地方創生を推進するための施策の一つに、ふるさと納税の促進策が盛り込まれた。個人住民税の特例控除額の上限を引き上げるとともに、確定申告が不要な給与所得者等がふるさと納税を簡素な手続きで行える「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を創設する。これと併せて、地方公共団体に対し、返礼品等の送付について、寄附金控除の趣旨を踏まえた良識ある対応を要請する。
  ふるさと納税は、自分の生まれた故郷だけでなく応援したい自治体など、どの都道府県・市区町村に対する寄附でも対象に、寄附金のうち2,000円を超える部分について、一定の上限まで、原則として所得税・個人住民税から全額が控除される。
  控除額の計算は、まず(1)所得税は「所得控除額(寄附金−2,000円)×所得税率」が軽減され、次に、(2)個人住民税の基本分として「(寄附金−2,000円)×10%」が税額控除される。さらに、(1)、(2)により控除できなかった寄附金額を、個人住民税の特例分として「(寄附金−2,000円)×(100%−10%(基本分)−所得税率)」との計算により全額控除する。
  この特例控除額の控除限度額は現行1割だが、平成28年度分以後の個人住民税から2割に引き上げる。年収700万円の夫婦子なし世帯の場合、現在、寄附金控除対象の寄附の上限は5万5,000円だが、単純計算で11万円までが寄附金控除の対象になる。
● 5つの自治体までの寄附は申告不要
  また、ふるさと納税による控除を受けるためには、寄附をした翌年に確定申告を行うことが必要だが、平成27年4月1日以後は、確定申告が不要なサラリーマン等の寄附については、5つの自治体までならば申告不要とする「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が創設される。6ヵ所以上に寄附する場合は、従来どおり全ての寄附の受領書を添えて確定申告する必要がある。自営業者や高所得のサラリーマン等は、この特例は適用されない。
  なお、地方公共団体に対しては、ふるさと納税について、寄附金が経済的利益の無償の供与であることや、寄附金に通常の寄附金控除に加えて特例控除が適用される制度であることを踏まえ、豊かな地域社会の形成及び住民の福祉の増進に寄与するため、都道府県・市区町村がふるさと納税に係る周知、募集等の事務を適切に行うよう要請する。これは、最近の各自治体の過度な“お礼”競争を抑制するものとみられている。
  このように、制度を推進したい総務省も、一方では率直に懸念を示している。本来、住所地に納税することが原則の住民税だが、特例控除額の引上げによって現在のブームがさらに過熱しかねないからだ。同省は返礼品の抑制に努めるよう自治体に自制を促しているが、実効性があるかは不透明だ。
  ※平成27年度税制改正大綱については、国会を通過するまでは確定事項ではありません。
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2015.02.02
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