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認知症施策推進総合戦略が策定される
■ 新たな施策方針や目標数値の引き上げが盛り込まれる
  わが国における認知症の人の数は、最新の推計によれば、10年後の平成37年に約700万人となり、65歳以上高齢者の約5人に1人が認知症に該当するとされている。今後、ますます大きな国家的課題となってくるだろう。
  認知症に関してはわが国だけの課題ではない。平成25年12月にロンドンで開催された「G8認知症サミット」を受け、各国で4つのテーマによる後継イベントが催されることとなった。日本では、そのうちの1つ「新しいケアと予防のモデル」をテーマとして、平成26年11月に東京・六本木で「認知症サミット日本後継イベント」が開催されている。
  そして、このイベントにおいて、内閣総理大臣より厚労大臣に向けて、「認知症施策を加速させるための戦略策定」が指示された。これを受けて平成27年1月に策定・公表されたのが「認知症施策推進総合戦略」(通称・新オレンジプラン)である。認知症施策については、すでに平成24年に「認知症施策推進5ヵ年計画」(オレンジプラン)が策定され、その計画に基づいた施策が推進されてきた。今回の新戦略は、このオレンジプランを改め、新たな施策方針や目標数値の引き上げなどを行なったものだ。ここでは、どのあたりの戦略が強化されたのかについて取り上げたい。
■ 認知症やその家族の視点を重視
  新オレンジプランは7つの柱で構成されている。@認知症への理解を深めるための普及・啓発推進、A容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供、B若年性認知症施策の強化、C介護者への支援、D認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくり、E予防法・診断法・治療法・リハビリモデル・介護モデルの研究開発など、F認知症の人やその家族の視点の重視となっている。
  具体的な中身としては、@であれば、全国キャンペーンの展開とともに、認知症サポーター※1の養成目標(平成29年度末まで)を600万人から800万人に引き上げた。Aについては、新任の介護職員等向けの認知症介護基礎研修(仮称)の実施や、平成30年度までに全市町村での設置が義務づけられた認知症初期集中支援チームなどが示されている。
  Bの若年性認知症については、本人の就労・社会参加や相談窓口の強化などが引き続き推進される。Cについては、介護者の負担軽減に効果があるとされる認知症カフェ※2等の設置に力を入れることになった。認知症高齢者の見守りやケアに資する介護ロボットの開発推進にもふれている。DEは新設された柱で、Dは認知症行方不明者の早期発見や詐欺被害の防止といった安全確保など、Eはビッグデータの活用により認知症予防に取り組むスキーム開発などが上がっている。
  新プランで特に注目したいのはFだ。たとえば、認知症の人やその家族の視点を認知症施策の企画・立案などに反映させる方法論の研究などが上がっている。すでに全国組織である認知症の人と家族の会などは、厚労省の審議会に参加しているが、今後は当事者の意見をどのように取り入れていくかが課題となる。高齢者の5人に1人が認知症となる時代を見据えたとき、当事者参加のあり方は国民合意を築くうえでは欠かせない道筋だろう。
  問題は、こうしたバラエティに富んだメニューをいかに実践していくかにある。単なる政権の人気取りに終わらないことを願いたい。
※1  認知症サポーターとは、養成講座を通じて認知症に対する正しい知識と理解を習得しつつ、地域で認知症の人を手助けする存在となってもらう人のこと。
※2  認知症カフェとは、地域の公民館などを活用し、認知症の人とその家族、さらに専門職や地域住民が主体的に参加して交流を深めていく場のこと。
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。
  
2015.02.09
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