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上場株式等の譲渡益、確定申告が必要な口座は?
  この時期、「昨年は株式取引で利益が出たから確定申告が必要だろうか?」「特定口座も確定申告をしなければならない?」など、お客さまから相談されることもあるだろう。証券取引の口座のメリット・デメリットなどを確認したい。
■ 一般口座は原則、20万円以上利益が得たら確定申告が必要
  証券会社などで上場株式の取引をする際は、「一般口座」「特定口座」のどちらの口座で行うのかを選択しなければならない。証券会社の中には一般口座と特定口座を併用できる会社もある。
  一般口座とは、特定口座で管理していない上場株式等を管理する口座をいう。一般口座で管理している株式等は、投資家自身で1月1日から12月31日までの1年間の売買損益を計算し、売買報告書による年間取引報告書を作成し、翌年2月16日から3月15日までに確定申告が必要である(平成27年は3月15日が日曜日のため、期限は3月16日まで)。
  ただし、@給与収入が2,000万円以下で、給与の支払が1箇所のみ(年末調整が済んでいること)で、給与所得・退職所得以外の所得金額20万円以下の人や、A公的年金等の収入が400万円以下で、公的年金等以外の所得金額が20万円以下の人は、所得税の申告は不要である(住民税については申告が必要)。
  つまり、上場株式等の譲渡益が、あるいはその利益と給与所得・退職所得以外の所得を合算した金額が20万円を超えたら、確定申告をしなければならないということだ。
■ 夫の扶養に入っている主婦は「源泉徴収ありの特定口座」がお奨め
  一方、特定口座は、上場株式等の譲渡益課税における個人投資家の申告・納税手続きを簡素化するために設けられた制度で、証券会社ごとに1人につき1口座しか作れない。「源泉徴収あり」か「源泉徴収なし」のいずれかを選択するが、どちらにするかはその年の最初の譲渡(または信用取引の差金決済)および配当等の受け入れまでに決めなければならない(その年の途中で変更はできない)。
  源泉徴収ありの特定口座では、証券会社が投資家に代わって損益通算し、源泉徴収した税金を納付するため、確定申告は不要だ。ただし譲渡損失の繰越控除の手続きをする場合や、他の証券会社の口座にある上場株式等の取引と損益通算する場合には、確定申告が必要となる。
  源泉徴収なしの特定口座については、投資家自身で証券会社が作成してくれた「年間取引報告書」を確定申告書に貼り付けて提出し、申告した税額を納付する。申告が必要かどうかの判断は一般口座と同じである。
  源泉徴収ありの特定口座については、その譲渡益は、配偶者控除や扶養控除等の適用の有無を判定する際の配偶者等の合計所得金額に含めなくてもよいことになっている。そのため、専業主婦やパート勤務の主婦が株式投資で利益を上げても申告の必要がないため夫の扶養対象から外れることはないが、源泉徴収なしの特定口座や一般口座を選択していて利益が出た場合には、夫の扶養から外れる可能性もある。
  そうなれば、所得税や住民税の配偶者控除が受けられないばかりか、第三号被保険者の条件を満たさなくなれば国民年金保険料を納めなければならない。さらには健康保険の扶養条件を満たさなくなれば国民健康保険に別途加入しなければならない、ということになりかねないので注意が必要だ。
  なお、源泉徴収ありの特定口座のデメリットとしては、売買益が出るたびに利益の20.315%が源泉徴収(所得税・住民税)されてしまうため、運用する資金(キャッシュフロー)が悪くなる恐れがあるということがあげられる。
  以上の点を踏まえると一般口座を選択するメリットはないように思える。上場株式の取引をしているお客さまから相談されたのなら、口座が一般口座か特定口座なのかを確認してもらうとよい。来年からは、FXなどの金融商品税制も大きく変更になる。この機会に金融商品の税制全体についてキチンと把握しておくべきだろう。
一般口座と特定口座の比較
項目 一般口座 特定口座
源泉徴収なし 源泉徴収あり
年間取引報告書 証券会社の取引報告書をもとに、投資家自身が年間取引報告書を作成 証券会社が作成
確定申告 必 要
ただし、年間の譲渡益等が
20万円以下であれば不要
不 要
ただし、損失の繰り越し控除の際には必要
納税 翌年2月16日から3月15日までに
確定申告で納税
利益が出るたびに
証券会社が源泉徴収
  
伊田 賢一 (いだ・けんいち)
株式会社FPウィム 代表取締役、株式会社WINKS 代表取締役
CFP®認定者、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
証券会社3社に勤務の後、2002年に独立系FPとして活動開始。独立系FP会社役員を経て、2007年に相談業務を中心としたFP会社として株式会社FPウィムを設立。2010年には多角的なFPサービスの提供を目的とした株式会社WINKSを設立。相談者の心の内の心配ごとをいち早く見つけ、個々人の夢や目標に応じたマネープランニングを提案し、実行援助、管理、見直しに至るまで包括的なサービスを提供している。個人や企業の相談は月平均30件、講演、セミナーも年間60件を超えるなど、幅広いファイナンシャル・プランニング業務を行っている。さいたま朝日に「家計の知っ得」、ホケモンに「保険の基礎知識」などを連載中。おもな著書に「うかる!FP技能士2級」「うかる!FP技能士3級」「うかる!証券外務員2種」などがある。
NPO法人日本FP協会 埼玉支部副支部長、 マネーカフェさいたま代表、埼玉県金融広報委員会アドバイザー。
株式会社FPウィム http://fpwim.com/
  
  
2015.02.12
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