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障害者雇用納付金の対象事業主、100人超に拡大
● 50人につき1人の障害者雇用義務
  企業・会社(以下、事業主)における障害者雇用のルールについては、メディアで報じられることもあるが、その詳細をよく理解している人はまだまだ少ない。事業主からの実務上の質問や相談も比較的多い分野でもあるので、今回は障害者雇用制度の概要について取り上げる。
  すべての事業主には障害者雇用促進法に基づき、常用雇用する労働者数の一定割合の身体障害者または知的障害者を雇用する義務(法定雇用率)があるが、民間企業の場合、法定雇用率は2.0%となっているので、常用雇用労働者数が50人以上の事業主であれば、正社員50人につき1人の障害者を雇用しなければならないことになる。
  また国は障害者雇用を推進する制度として障害者雇用納付金制度というものを設けており、雇用障害者数が法定雇用率に満たない事業主から一定金額を徴収し、それを原資として、法定雇用率を満たす事業主に対し、障害者雇用調整金等を支給して、全体のバランスをとっている形になっている。今回は、障害者雇用納付金制度の対象範囲が平成27年4月から拡大されることによって影響を受ける事業主も多いのでポイントを押さえておきたい。
● 平成28年4月から申告・納付が開始
  上記の障害者雇用納付金制度は、これまでは常用労働者 200人超の事業主から納付金を徴収していたのだが、障害者雇用促進法(平成25年改正)の一部が施行され、平成27年4月からは障害者雇用納付金制度の対象範囲が、常時雇用労働者数100人超の事業主へと拡大することが決まっている。対象となる事業主の数も大幅に増えるので、事業主だけでなく人事労務担当者、さらにその関係者も概要を理解しておく必要がある。
  障害者雇用納付金は、雇用すべき障害者が1人不足するごとに1ヶ月当たり5万円を納めることになっている。すなわち、例えば常時雇用労働者数が101人の事業主であれば、不足人数2人の場合、年間60万円×2人となって納付金は120万円になるのだが、これはかなり重い負担となる。
  ただし、今回のように対象事業主を拡大する際には5年間の減額特例が実施されている。減額特例の対象事業主は、常用雇用労働者が200人超300人以下については2015年6月まで、常時雇用労働者数が100人超200人以下については2015年4月1日から2020年3月31日までの間、障害者雇用納付金の金額が1ヶ月当たり5万円から4万円へ減額されることになっている。
  今回、新たに障害者雇用納付金の対象となる事業主は、27年4月〜28年3月までの分を平成28年4月1日〜5月16日の間で申告・納付することになる。窓口は独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構となっているので、不明点や制度の詳細については早めに確認することをおすすめする。
参 考 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2015.02.16
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