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厚労省、高齢者虐待の実態の調査結果を公表
● 平成25年度の高齢者虐待件数は増加に
  厚生労働省は2月6日、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(以下、高齢者虐待防止法)に基づき、高齢者虐待についての調査結果を公表しました。平成25年度の高齢者虐待の対応状況等を示したもので全国1,741市町村(特別区を含む)及び47都道府県の地域が対象です。平成18年に高齢者虐待防止法が施行されたことにより、平成19年から毎年調査が実施されています。
高齢者虐待の判断件数、相談通報件数(平成24年度対比)
  養介護施設従事者等(*1)によるもの 養護者(*2)によるもの
虐待判断件数 相談・通報件数 虐待判断件数 相談・通報件数
25年度 221件 962件 15,731件 25,310件
24年度 155件 736件 15,202件 23,843件
増減
(増減率)
66件
(42.6%)
226件
(30.7%)
529件
(3.5%)
1,467件
(6.2%)
*1 介護老人施設など養介護施設または居宅サービス事業など養介護の業務に従事する者
*2 高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等
  高齢者虐待と認められた件数は、「養介護施設従事者等によるもの」が221件で前年度より66件(42.6%)増加したのに対し、高齢者の世話をしている家族等による「養護者によるもの」は15,731件で、前年度より529件(3.5%)増加しました。また、市町村への相談・通報件数は、介護施設の職員等によるものが962件で、前年度より226件(30.7%)増加したのに対し、家族等によるものは、25,310件で、前年度より1,467件(6.2%)増加しました。
● 養介護施設の職員等による高齢者虐待の傾向
  養介護施設での虐待の発生要因としては「教育・知識・介護技術等に関する問題」が128件(66.3%)で最も多く、次いで「職員のストレスや感情のコントロールの問題」51件(26.4%)、「虐待を助長する組織風土や職員間の関係性の悪さ」25件(13.0%)と施設側は回答しています。被害を受けた高齢者の総数402人のうち、叩く・殴るなど身体的虐待が258人(64.2%)で最も多く、著しい暴言、拒絶的な対応など心理的虐待132人(32.8%)、長時間の放置など介護等放棄67人(16.7%)がありました。性別では総数402人のうち女性が290人(72.1%)を占め、非力な女性が被害にあう場合が多く、また意思の疎通がとりづらい認知症の高齢者は、身体的虐待を受ける割合が特に高いと結果が出ています。
虐待の事実が認められた施設・事業所の種別
施設 件数
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) 69件(31.2%)
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 34件(15.4%)
介護老人保健施設 26件(11.8%)
有料老人ホーム 26件(11.8%)
  虐待をする者(以下、虐待者)を性別でみると、男性141人(51.8%)、女性131人(48.2%)でほぼ半々ですが、介護従事者全体に占める男性の割合が21.4%なので、虐待者に占める男性の割合は高いことになります。また、年齢別にみると、男性女性ともに30歳未満の割合が高くなっています。
● 家族等による高齢者虐待の傾向
  家族等の養護者による虐待の発生要因としては「虐待者の介護疲れ・介護ストレス」が1,398件(25.5%)で最も多く、「虐待者の障害・疾病」1,221件(22.2%)、「家庭における経済的困窮(経済的問題)」925件(16.8%)でした。身体的虐待が65.3%で最も多く、次いで心理的虐待41.9%、介護等放棄22.3%、経済的虐待21.6%でした。虐待を受けた高齢者の総数16,140人のうち、女性が12,537人(77.7%)とやはり女性が被害にあう傾向があります。
  虐待被害は、要介護度が重い場合や、認知症がある、寝たきりの程度が高いなど、または介護保険サービスの利用の程度や、高齢者と養護者が同居しているなどの要因がある場合に、深刻度が高くなる傾向にあります。
  いずれ誰もが迎えるであろう高齢期を、皆が穏やかに過ごせる社会であってほしいと願います。
参考 厚生労働省
平成25年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果
  
半田 美波(はんだ・みなみ)
社会保険労務士
みなみ社会保険労務士事務所 代表、株式会社サンメディックス 代表取締役
診療所で医療事務職として勤務した後、医療法人事務長、分院の設立業務担当を経て、2003年に医療機関のサポート会社・(株)サンメディックス設立。2004年にみなみ社会保険労務士事務所を設立。医療機関に詳しい社労士として知られる。
  
  
2015.02.23
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