>  今週のトピックス >  No.2978
医療制度改革における「後期高齢者支援金」改正の論点
■ 平成29年度から全面総報酬割導入を検討
  国民皆保険制度の持続可能性を維持するべく、厚生労働省は現在、医療保険制度改革案の取りまとめを進めている。現在、開催中の平成27年度通常国会(会期は6月まで)に、法案として提出される予定だ。その中の大きな論点の一つとなっているのが、後期高齢者支援金における総報酬割の導入である。
  後期高齢者支援金とは、後期高齢者医療制度において患者負担を除いた医療給付費のうちの約4割を構成するもので、残りの医療給付費の内訳は、現役世代の保険料から成り立っている(約5割が公費、約1割が高齢者の保険料)。この後期高齢者支援金を各保険者で按分する際、平成29年度から全面総報酬割を実施する案が示されている。現行の加入者割の場合、加入者数に応じて負担するため、財政力が弱い保険者の負担が重くなっている。仮に全面総報酬割が実施された場合、財政力に応じた負担となるため、報酬水準の高い健保組合の按分は増し、報酬水準の低い協会けんぽなどは低下することになる。
  また、全面総報酬割が実施された場合、協会けんぽに対する国費による補助分が浮くことになる。その使い道の一つは、拠出負担が増す被用者保険(健保組合)への支援に回すという案。もう一つが、国保の財政支援に回すというものだ。骨子案では後者が優先されることが示されているが、双方の具体的な金額についてはまだ示されていない。
■ 加入者の予防・健康づくりへの取り組みを評価
  さて、後期高齢者支援金にかかる負担で、もう一つ大きなポイントとなるのが加算・減算制度のしくみである。この加算・減算制度について、現行では「特定検診・保健指導の実施率」や「内臓脂肪症候群の該当者・予備軍の減少率」などの目標達成を基準としている。この目標達成の実績に応じて、支援金拠出が減算・加算される。つまり、実績が高ければ、減算される分、その被保険者にかかる保険料が抑えられることになる。
  この加算・減算制度について、骨子案では「予防・健康づくり等に取り組む保険者に対するインセンティブをより重視するため」のしくみを目指すとしている。具体的には、多くの保険者に広く薄く加算し、指標の達成状況に応じて最大10%の範囲内で段階的に減算するというものだ(現在は、加算対象となるのは「特定検診・保健指導」の実施率がほぼ0%の保険者に限られている)。また、現行の基準に、後発医薬品の使用割合等の指標も加えるという案も示されている。なお、国保や協会けんぽについては、別のインセンティブのしくみを設ける予定でもある。
  さらに注目されるのは、インセンティブの対象に加入者である個人も含めるという案だ。具体的には、加入者の予防・健康づくりに向けた取り組みに応じ、ヘルスケアポイントの付与や保険料への支援などを行なうというもの。ヘルスケアポイントを付与するケースとしては、健康診断を受けたりすることのほか、日々の歩数・体重を記録する、健康アンケートに答えるといった例があげられている。詳細については、制度の枠組みが整ってから、国がガイドラインを定めるとしている。
  被用者保険側としては、財政支援を受ける一方で「加入者ぐるみで健康づくりに取り組」むことを迫られることになる。もちろん、増加する後期高齢者側に対しても、さまざまな健康増進事業が用意されつつある。単に保険者間の課題というだけでなく、個人も巻き込むという施策の流れが今後も強まりそうだ。
田中元さんの新刊が出ました!
まんがでわかる介護のしごと』
体裁:208ページ
原作:田中 元
まんが:みなとあつこ
価格:1800円+税
発行:ぱる出版
詳しくは、ぱる出版のサイトへ
人に寄り添うしごとである介護職。しかし、新人が入っても次々に辞めてしまうのが、介護現場のリアルな現実。
人に寄り添うしごとでいちばん大切なことって何だろう? 31のストーリーからホップ・ステップ・ジャンプで課題解決力を高め、未来の進むべき方向性が見えてくる、介護まんが。「やる気」と「誇り」が湧いてくる、「考える介護」のバイブルとして新人育成テキストに最適な1冊。
<目次>
第1章 まんがでわかる介護のしごと【基本編!】
第2章 介護現場のしごとの流れ【マネジメント編!】
第3章 しごとのスキルをどう高めるか【キャリアアップ編!】
  
田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。
  
2015.02.26
前のページにもどる
ページトップへ