>  今週のトピックス >  No.2979
残業代ゼロ法案提出へ、2016年4月実施目指す
● 「高度プロフェッショナル制度」という新しい働き方
  厚生労働省の労働政策審議会は2月13日、長時間働いても残業代などが支払われない新しい働き方を創設することなどを取りまとめた報告書を発表した。厚労省は今期の通常国会に労働基準法改正案を提出し、2016年4月の実施を目指すことになる。
  この“残業代ゼロ法案”については、労働組合などからは、どれだけ働いても「残業代ゼロ」になり、働き過ぎの歯止めがなくなるという批判の声もあがっており、問題も多い。
  新しい働き方は「高度プロフェッショナル制度」と呼ばれ、導入のねらいについて、報告書では「時間でなく、成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応える」と記載している。高度な専門知識や技術、経験を持つ労働者を対象にし、為替ディーラーやアナリスト、コンサルタントなどを想定している。年収の条件としては、「1,075万円以上」と省令に明記する予定となっている。対象者は何時間働いても残業代や深夜・休日手当が支払われなくなることになるが、企業で導入する場合は本人の同意を条件とし、年104日以上の休日の付与などを要件としている。
  今回対象となる人の割合は、労働者全体からみるとそれほど多くはないが、今後その対象となる範囲が拡大されるのではないかと懸念する声もあがっており、法案成立後の詳細についても押さえておきたいところである。
● フレックスタイム制の拡充も大きな改正ポイントの1つ
  今回の労働基準法改正案のなかには、上記の残業代ゼロ法案だけでなく、フレックスタイム制の拡充に関する内容も盛り込まれている。
  フレックスタイム制とは、一定期間(清算期間は現在1ヶ月)における総労働時間をあらかじめ定めておき、労働者はその枠内で各日の始業及び終業の時刻を自主的に決定し働く制度で、労働者がその生活と業務の調和を図りながら、効率的に働くことができ、労働時間を短縮しようとするものだ。これまで利用している企業も比較的多かったが、今後さらに導入かつ運用しやすくするための内容が検討されてきた。
  改正案では、これまで1ヶ月単位だった一定期間を3ヶ月単位で調整できるようにしている。このように3ヶ月の範囲で長めに働く期間と短めに働く期間をつくることによって、よりメリハリのある働き方が可能となる一方で、繁忙期には長時間労働が続くリスクがあるので、今回はそのリスクを回避するための仕組みも設けられている。
  1ヶ月の労働時間が1週間当たり50時間を越えるときには残業代を支給するものとしており、従業員が働き過ぎになることがないよう工夫はされているが、こちらもやはり現場での運用面では不安も残る。
  高度プロフェッショナル制度及びフレックスタイム制拡充のいずれにおいても、ポイントはいかに働き過ぎを防止できるかという点になる。このように今回の労働基準法の改正案は大きな注目を集めているため、経営者だけでなく、一般の従業員であってもその概要だけは最低限理解しておくべきであるといえるだろう。
参考 厚生労働省 第125回労働政策審議会労働条件分科会資料(2015.02.13)
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2015.03.02
前のページにもどる
ページトップへ