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成年後見人等に社会福祉士の受任が急増中
● 親族以外の代表格は弁護士、司法書士、社会福祉士
  認知症の方や重度のおひとり様(独居)の方の在宅介護では、通常の介護サービスでは対応が困難なケースがある。本人が対処できない、あるいは判断能力がない場合、家庭裁判所に成年後見人等の申立てをすることになる。
  法定後見人として家庭裁判所へ後見人等候補者名簿を提出しているのはおもに弁護士、司法書士、社会福祉士の3職種の団体だ。最高裁判所事務総局家庭局の取りまとめによると、平成25年の成年後見関係事件(後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件)の申立て件数は3万4,548件であった。そのうち親族以外の第三者が成年後見人等に選任されたものは、全体の約57.8%(前年は約51.5%)で増加傾向にある。第三者のうちの上位3職種が司法書士(7,295件)、弁護士(5,870件)、社会福祉士(3,332件)だ。
● 身上監護などの理由から社会福祉士への依頼が増加
  申立ての動機で多いのは預貯金などの管理や相続関係だが、そうしたなか介護問題や定期訪問して生活相談を受ける身上監護を期待するケースが目立つようになってきた。前述の最高裁判所事務総局家庭局の資料によると、「主な申立ての動機別件数」の第3位を占めている(図表1参照)。このようなケースでは、法律面から権利擁護する弁護士や司法書士よりも、地域にある医療や介護、福祉とのネットワークで本人を守っていく社会福祉士の出番だ。
  公益社団法人日本社会福祉士会によると、社会福祉士による平成26年2月期の成年後見人等の受任件数は1万3,930件だ。これまでの推移をみると、改正介護保険法、障害者自立支援法、虐待防止法が施行された平成17年に対前年300件以上の増加だったが、年を重ねる毎に増加傾向は強くなり、20年には対前年増加が1,000件を超え、25年以降は2,000件近い増加件数で伸びている(図表2参照)。
図表1 主な申立ての動機別件数

「成年後見関係事件の概況−平成25年1月〜12月−」(最高裁判所事務総局家庭局)
図表2 成年後見人等の社会福祉士受任件数年次推移

(公益社団法人日本社会福祉士会ホームページより)
  こうしたニーズの高まりに呼応して独立開業型の社会福祉士事務所も増えてきた。ケアマネジャーは困難ケースについて連携している地域包括支援センターや地元の社会福祉協議会や社会福祉士会などに相談。そこから紹介された社会福祉士が成年後見人等として認知症などの高齢者を支援している。
  申立人を見ると、本人の子が最も多く全体の約34.7%(平成25年/最高裁判所事務総局家庭局)を占める。たとえば本人と家族の思いが一致しないケースで、家族の思い通りに事を進めようと成年後見を申し立てるケースがあるが、それは誤った解釈による使い方だ。成年後見人は本人の法定代理人であり、家族を守るための制度ではない。したがって成年後見制度を活用しても家族の思惑通りの相続にはならないのだ。
  しかし、成年後見人を立てることで、医療機関や介護サービスなどの支払い関係がスムーズになり、本人とって良い環境づくりにつながる。また、相続の準備もスムーズになる。具体的な介護計画を検討するケアマネジャーと成年後見人が連携して高齢者を支えていくことが、これから増えていきそうだ。
  
安藤 啓一 (あんどう・けいいち)
福祉ジャーナリスト。
千葉県出身。大学卒業後、新聞や雑誌記者を経験した後、介護福祉誌の編集長を経てフリーに。パラリンピックや障がい者支援、高齢者介護、医療経営、子育てなどの分野を中心に取材活動をしている。医療、介護と縦割りになりがちな情報を、当事者の目線にこだわり、地域発想、現場重視で「横串」編集することを心がける。鳥取県の「介護ガイドAi」(鳥広マガジン)は、編集を担当。介護テキスト、医療経営誌、介護専門誌などで執筆している。また3人娘の父親として、子育て支援活動にも取り組む。
  
  
2015.03.05
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