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27年度税制改正で欠損金繰越制度が縮減、その影響は?
● 平成27年度の法人税制の改正
  法人に対する課税について段階的に実効税率を引き下げるという方針が、税制改正大綱発表前から報道されていたが、平成28年度までの法人税率は原則23.9%(現行25.5%)に引き下げられ、中小企業等に適用される軽減税率の特例(年800万円以下の所得金額に対する税率15%)も平成28年度まで(2年間)延長されることとなった。しかし、その一方で、財源の確保のための課税ベース拡大に向けた動きも見られ、大企業のみを対象にした対応のみではあるが、法人事業税の外形標準課税の拡大をはじめ、欠損金繰越控除制度の見直し、受取配当等益金不算入制度の見直しが行われており、今後、このような流れが法人課税全体にも波及して行く可能性も感じられる。
  今回は、平成27年度税制改正における「欠損金繰越控除制度」の内容を確認してみることとしたい。
● 「欠損金繰越控除制度」の概要と今回の改定案
  欠損金繰越控除制度とは、事業年度において欠損金が生じた場合、欠損金額に相当する金額を翌事業年度以降の損金の額に算入することが認められる制度であり、一度で控除し切れない場合は最大で9年間にわたって欠損金相当額の控除を繰越すことができるというものである。ただし、大企業については毎年の控除額の限度が課税所得の80%相当額に制限されている。
  長らく続いた不況による業績の低迷のためか、近年(平成20〜25年度)の法人税納税状況は、申告法人の70〜75%前後までが欠損法人となっているが(国税庁「平成25年 国税庁統計年報書」より)、当制度適用による影響も大きかったのではないかと推測される。
  27年度税制改正では、以下のような改正が行われる予定である。
   @   大企業について、毎年の控除額の限度を、平成28・29年度は課税所得の65%、平成29年度は同50%に制限
   A   繰越期間について、平成29年度以降は最大10年間に延長
   B   赤字が先行しやすいベンチャー企業や、経営再建を行う企業については、雇用やイノベーションの創出、または円滑な事業再生の促進という観点から、「7年間・100%控除」とする制度を創設
● 今後の流れ〜中小企業等に係る制度の見直しは?
  上記を見ても明らかなように、今回の改正は基本的に大企業が当制度を適用する場合の適用範囲の縮減が中心となっており、中小企業等に関しては、
   @   毎年の控除額についての限度設定はなし(課税所得相当額いっぱいまでの控除が可能)
   A   平成29年度以降は、繰越可能期間が最高10年に延長
と、基本的に現行の制度が存置され、中小企業等に対する優遇策が取りあえずは継続されている。この方向性は、他の改正項目、法人事業税の外形標準課税の拡大、および、受取配当等益金不算入制度の見直しについても同様である。
  なお、中小企業等への今後の対応については、平成27年度税制改正大綱の「法人課税」の項目において、中小法人課税全体の見直しを行うことが示唆されている。現在、政府の成長戦略推進の観点などから行われている各種の税額控除制度や中小企業等の特例等についても、ある一定の成果が達せられた時期からは、財政健全化への取組みのための制度改正が行われることも考えられるため、今後の流れに注視して行きたい。
※平成27年度税制改正大綱については、国会を通過するまでは確定事項ではありません。
2015.03.09
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