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介護療養病床が「療養機能強化」されて存続へ
■ 介護療養病床は重度療養の受け皿として要件を設定
  高齢者の重度療養ニーズに対し、重要な受け皿のひとつとして機能してきたのが、医療機関における療養病床だ。しかし、「社会的入院を助長する」という批判のもと、介護保険対応の療養病床(以下、介護療養病床)について、当初は平成29年度いっぱいで廃止し、他の介護施設などへの転換を進めるという方針が示されていた。
  しかし、医療制度改革における病床再編により、重度の療養ニーズの受け皿整備が急務となり、社会保障審議会・介護給付費分科会で「介護療養病床の機能を再編して存続させる」という施策転換が明らかとなった。その「機能再編」の具体像が、平成27年4月から適用される介護報酬の改定案に盛り込まれている。
  その再編で新たに誕生したのが、療養機能強化型の介護療養病床だ。区分はA、Bの2つに分かれており、ともに「重篤な身体疾患を有する者および身体合併症を有する認知症高齢者の割合が、50%以上である」ことを要件としている。そのうえで、「喀痰吸引や経管栄養、インスリン注射が実施された者の割合」という実績も要件として加えられた。さらに、「一定条件のもとでターミナルケア(終末期の医療・看護)が行われた者の割合」も、Aで10%以上、Bで5%以上というハードルを設けている。
  病床側に支払われる介護報酬については、既存の通常型よりも高く設定された。平成27年度からの介護報酬は、ほとんどのサービスにおいて軒並み基本報酬が大きく引き下げられている。療養機能強化型も例外ではなく、改定前の既存型より基本報酬は引き下げられた。それでも、通常型に比べて、療養機能強化型の引き下げは微減に抑えられている。重度対応にかかるコストの問題はあるが、医療機関側の資源を活かせる点を考えれば、今後は重度療養型への移行という選択肢が有力になるだろう。
■ 特養ホームも重度療養の受け皿へ誘導
  国のこうした施策転換は、裏を返せば、重度療養の受け皿整備が間に合っていないことを示している。急性期からの患者の動きを「川の流れ」にたとえるケースが増えているが、ここ何回かの診療報酬改定により「上流」からの患者の送り出しは確実にスピードアップしている。それに対し、「下流」にあたる在宅療養の受け皿はまだ十分に整っているとは言い難い。
  この在宅療養を介護保険で補完する動きが強まっているが、家族介護者の減少や高齢化も加速しており、さじ加減を間違えれば「療養困難者」が一気に増えかねない。一種の社会的パニックも発生しかねない中で、国としても「病床機能」における受け皿調整に入らざるを得なくなったというのが実情だ。
  ちなみに、特養ホームの入居要件が原則要介護3以上となったが、「より重度の人の受け皿としていく」という仕掛けもほどこされている。それが「日常生活継続支援加算」で、要介護4以上というさらに重い人の割合が7割以上を要件としている。今回の改定では、「入居者全体の割合」から「新規入居者に対する割合」へと変更が行われた。つまり、最初から「特に重度の人を受け入れる」ことへの誘導がなされているわけで、実は、特養ホームも重度療養の受け皿という位置づけが色濃くなっている。
  それだけ「川上」側の改革により、「重度療養ニーズ」の行き先が厳しくなっていることの証といえる。来年度の診療報酬改定では、新たな受け皿が誕生することも想定される。
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。
  
2015.03.12
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