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診療報酬による消費税補てんは、65%の病院が補てん不足
● 社会保険診療は消費税非課税取引、仕入税額控除はできない
  昨年4月の消費税率8%への引上げに伴う医療機関の負担増過分を診療報酬に上乗せして補てんする方式では、施設数ベースで約65%の病院で補てん不足が発生し、特に400床以上の大規模病院では極端な補てん不足が発生していることが、四病院団体協議会・日本病院団体協議会がこのほど発表した「医療機関における消費税に関する調査結果(最終報告書)」で明らかになった。
  公的医療保険でカバーされている医療(社会保険診療)は、消費税が導入された当初より、消費税に馴染まない取引の一つとして非課税とされてきた。一方、診療のために医療機関が仕入れる医薬品や医療機器には消費税がかかっているが、非課税取引であるが故に仕入税額控除ができないため、消費税の導入時・増税時には、診療報酬への点数上乗せによる補てんが行われてきた経緯がある。
● 400床以上の病院での補てん不足が顕著
  調査結果(有効回答数303病院)によると、補てん率の分布状況は、補てん率「50〜100%未満」のグループが最多で全体の60.7%を占め、「50%未満」(4.6%)のグループと合わせて65.3%の病院が補てん不足の状態であることが分かった。補てん率の中央値は84.2%。補てん率50%未満の病院がある一方で、「150%以上」の病院も1割強(13.9%)あるなど、個々の病院によるバラつきがみられた。
  病床規模別の分類では、病床数の増加に伴い補てん率が低下する傾向がみられ、「200床未満」の病院での補てん率の中央値が99.4%である一方、「400床以上」の病院での補てん率の中央値は73.9%と、補てん不足が顕著となる。
● 消費税の不足額は全国で約344億円と推計
  また、補てん率を総額補てん率(個々の病院の補てん率ではなく、一定範囲の対象病院における補てん額総額の経費増総額に対する比率)でみた場合の補てん状況は76.2%となる。
  総額補てん率を病床規模別にみても、「200床未満」で99.2%、「200床以上400床未満」で87.2%、「400床以上」で70.5%と、どの規模群でも補てん不足の生じる可能性が示唆された。特に400床以上の大規模病院においては、極端に大きな補てん不足が生じていることが判明したとしている。
  これは、大規模病院の減価償却率上昇や人件費率低下の影響のみならず、大規模病院における医療環境整備の投資部分が直接的に補てんされていないことが理由と分析している。
  なお、同協議会は、「今回の調査対象とした303病院の病床規模別データを基に、全国8,540病院についての消費税の過不足額を推計したところ、総額約344億円の不足のある可能性が示唆された」と報告している。
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2015.03.16
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