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通所系介護サービスのあり方に大きな変化
■ 報酬改定で、より手厚いサービスや高度なマネジメントに加算
  平成27年度から適用される介護報酬の内容を見ると、通所系サービスにおいて、「利用者の生活」に密着するための仕組みが一気に増やされた。通所系といえば、たとえば要介護者の3割が利用する通所介護(デイサービス)がポピュラーだが、それだけ利用者としては着目しておきたいポイントといえる。
  介護保険の通所系サービスには、先にあげた通所介護のほか、通所リハビリ、療養に力を入れた通所看護(療養通所介護)、認知症ケアに特化している認知症対応型通所介護がある。これらのサービスの場合、これまでは「通ってきた利用者に対応する」ことが主眼となっていた。もちろん、利用者が家でどのような生活をしているかを考慮し、その継続のために生活機能の向上訓練などを行なうことはこれまでも求められてきた。しかし、現実には、そうした「考慮」の手段はケアマネジャーからの情報提供や、利用者宅で行われるサービス担当者会議による部分が大きかった。
  これに対し、今回の報酬改定では、より手厚いサービスを行なうための「加算」(上乗せ料金)の中身として、「サービス担当者が節目ごとに利用者宅を訪問する」ことを要件としているケースが増えている。たとえば、通所介護で「個別での機能訓練」をしっかり行なうことにかかる加算(個別機能訓練加算)について、より高い加算をつけるためには「利用者宅に定期的に足を運んで(その家屋での)生活状況をモニタリングする」ことが求められた。
  また、通所リハビリにおいては、利用者の生活行為の機能に密着した高度なマネジメントに加算がついた(リハビリ・マネジメント加算)。ここでも、利用者宅へ出向いて、「通所での訓練が家での生活機能に結びついているか」を評価することが要件となっている。さらに、ホームヘルパーによる訪問介護と連携しながら、「ヘルパーが行なう介助行為」について、本人の生活機能を維持・向上させるような工夫などを一緒に実地検分するというしくみも設けられた(これまでは、訪問介護と訪問リハビリの連携のみだった)。
■ 通所リハビリ、利用者の「その後」まで評価対象に
  もう一歩踏み込んだ部分もある。通所系サービスの場合、事業所による送迎が行われることがある。その際に、通所の職員(介護福祉士であることが必要)が、家内で利用者の着替えを介助したり、ベッド・車椅子への移乗介助を行なった場合、その時間を通所のサービスとして算定することができるようになった。これまでは、家からの送り出しや迎え入れに際しては訪問介護などがあてられることが多かったが、この「家の中での介護」に通所側がかかわることに踏み込んだわけだ。
  さらに興味深いのは、通所リハビリを通じて機能回復が実現し、「利用者がサービスを離脱(卒業)した」場合のケース。通常なら、それで事業所側のかかわりも終了するわけだが、新しく誕生した加算の中に、「利用者がきちんと社会参加を果たしているか」をアフターチェックするというしくみがある。利用者の「その後」まで評価の対象とするのは、介護保険のサービスとしては極めて異例だ。
  以上の点を見たとき、通所系サービスにも、「利用者の生活を総合的に見る」という役割が強化されたことになる。サービスを利用する側としても、「通所サービスは通って受けるだけ」という考え方を改めるべき時代に入ったと言える。3年後の再度の報酬改定では、この流れがさらに強化されると思われる。
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<目次>
第1章 今回の介護保険制度改正の狙いは何か
第2章 まず、最も利用者の多い訪問・通所介護を掘り下げよう
第3章 特養ホーム等、施設の基本報酬ダウンと中重度者対応への重点施策
第4章 在宅系サービスでは、“重点化”はどう反映されたのか
第5章 国の最重要施策“認知症”対策と介護保険との関係はどうなるのか?
第6章 手厚く加算されたリハビリ・マネジメントの強化で仕事はどう変わるのか
第7章 介護職員の処遇改善はどのように進んだのか
第8章 総合事業による介護保険の「スリム化」そして“重点化”にどう対応したらいいのか
  
田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。
  
2015.03.26
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