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専業主婦も確定拠出年金への加入なるか?
● 確定拠出年金制度の見直しにより対象者拡大へ
  平成27年度税制改正大綱によれば、確定拠出年金改正法の施行後(平成28年4月以降となると言われている)、確定拠出年金(DC)の個人型の加入対象者が拡大され、拠出限度額も見直される見通しです。
  加入対象者の拡大について特徴的なところでは、いままで確定拠出年金制度に加入できなかった@公務員、A会社員・公務員を夫に持つ専業主婦等(@とAを合わせて約1,400万人)と、B確定給付型企業年金(確定給付企業年金・厚生年金基金)のみ加入者等が、新たに個人型DCに加入できるようになります。
  現在の企業年金制度は、働き方によって縦割りの制度になっていますが、ライフコースの多様化により、職場を変えても所得確保策を充実させる必要があったことから、これまで確定拠出年金制度に加入できなかった人を加入対象に加えるものです。
● 専業主婦等も自助努力により老後の所得確保を!
  この中で、特にピックアップしたいのは、会社員・公務員を夫に持つ専業主婦等(正確には、国民年金の第3号被保険者)の加入が可能になることです。
  第3号被保険者は、国民年金(基礎年金)のみの加入であり、現状年額約78万円の老齢基礎年金だけでは、老後の生活基盤が厳しいというのは、容易に想像がつきます。
  そこで、上乗せの「半」公的年金制度である確定拠出年金制度に加入するのです。
  この場合の年拠出限度額は、27.6万円(月2.3万円相当)と多額ではありません。しかし、「年27.6万円×40年=1,104万円」と1,000万円超の額の老後資金準備が可能となります。もちろん、確定拠出年金ですから、最終的に受け取ることのできる金額が確定しているわけではありませんが、時代環境を考えれば、インフレリスクにも対応できる老後資産の準備という観点からすれば、加入は良策のひとつであると言えましょう。
● DC掛金は誰が準備するのか?
  個人型DC掛金は、所得税法上の小規模企業共済等掛金控除の対象になります。これは、掛金の全額が所得控除の対象となり、大きな節税につながります。
  そこで、問題です。
  専業主婦等は、自身に所得のない方も多く、掛金の負担能力がある方ばかりではありません。その際、仮に、夫が掛金を負担しようとした場合、現状の法令の範囲内では、夫の所得控除の対象にはならないのです(専業主婦等の本人が掛金を支払ったときのみ所得控除の対象)。
  これには、不思議な感覚を覚える方もいらっしゃるでしょう。第3号被保険者は国民年金保険料を支払っていませんので、上乗せ年金を用意する場合は、ご自身の財布から出せということなのでしょうか。
  現段階では、詳細不明であり、踏み込んだことは言えないのですが、改正状況を見守り、老後資金準備の策を練りたいと考えています。
  
木下 直人(きのした・なおひと)
社会保険労務士、CFP、1級DCプランナー、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、保険コンプライアンス・オフィサー2級
  東京大学農学部卒。保険業界勤務。保険税務や社会保険・ライフプランなどの資材作成・研修講義はわかりやすく、面白いとの定評がある。
  
2015.04.06
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