>  今週のトピックス >  No.3003
退職後の健康保険はどうすればいい?
● 退職後の健康保険のことまで細かく調べている人は少ない
  従業員が会社を退職する理由は、定年、転職、結婚、独立のためなど本当に様々であるが、退職後の健康保険のことについてまで事前に細かく調べている人は、まだまだ少数派ではないだろうか。
  会社を退職するということは、社会保険を喪失することになるので、退職日以降はそれまで使っていた健康保険証は使用できなくなる。退職後の公的医療保険については、一般的には3つの選択肢があり、本人の状況によって選ぶことになる。
● 国民皆保険制度の下、個々の状況に照らして選ぶ
  退職後の公的医療保険の加入には次の3つの選択肢がある。
1. 家族が加入している協会けんぽ等の健康保険の被扶養者になる
2. 退職前に加入している健康保険を任意継続する
3. 市区町村が運営する国民健康保険に加入する
※ 次の就職先が決まっている場合は、通常は、就職先の健康保険制度に加入することになる。
  毎月納める保険料などそれぞれの制度を比較し、いずれかの公的医療保険に加入することになるが、個人の置かれている状況によって選択できないこともある。
● 被扶養者として加入する
  健康保険の被扶養者は、保険料がかからないことが最大のメリットだが、家族の有無や収入制限があるため、この制度をすべての退職者が選択できるわけではないので注意が必要だ。
● 退社前のものを任意継続する
  一定の要件を満たせば在職中の健康保険に加入し続けることができる「任意継続制度」というものがある。保険料については、在職中に事業主が負担していた分も合わせて負担しなければならないため、在職中の2倍の保険料を納付する必要がある。
  ただし、退職時の標準報酬月額が、被保険者全体の平均標準報酬月額を超えている場合には、その平均標準報酬月額で保険料を計算することになり、国民健康保険と任意継続のいずれかに加入するか迷っている場合は、国民健康保険に加入した場合の保険料と比較するのが良い。
  仮に退職前に加入していた健康保険を任意継続したほうが国民健康保険よりも保険料が高額になったとしても、扶養家族が多い人の場合は、任意継続を選択したほうが世帯全体で見た場合、保険料負担が軽くなることもあるので家族全体の保険料負担を計算して検討してみるほうが良い場合もある。
● 国民健康保険に加入する
  国民健康保険の保険料は、市区町村により計算方法が異なるため、一概に保険料を計算することができない。前年の年収と世帯人員数で保険料は決まることになっている。保険料の金額を知りたい場合は、市区町村に問い合わせるのが一番確実である。
  また、国民健康保険には被扶養者という制度がないため、在職中に被扶養者であった者(配偶者、子など)もすべて被保険者となり被扶養者が多い世帯では、保険料が高額になる可能性がある。
  その一方で、倒産・解雇等により離職した方及び雇止めなどにより離職された方については、国民健康保険料(税)を軽減する制度もあるのでそのあたりも押さえておきたい。
  日本は国民皆保険制度となっているので、国民全てが、もちろん退職後であってもいずれかの公的医療保険に加入することになっている。したがって、退職後に保険の切り替え手続きを何もしていないと、在住している市区町村の国民健康保険に加入していることになるということは覚えておきたい。
  保険料を払いたくないから国民健康保険の手続きをしていないという人も稀にいるが、遡及して国民健康保険料を支払わなければならなくなるので、国民健康保険を選択するのであれば退職後に速やかに手続きをしたいところである。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2015.04.13
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