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小規模企業共済の共済事由の見直しとトリプル税優遇
● 共済事由の見直しにより円滑な事業承継を
  小規模企業の経営者が、掛金の額や納付期間に応じて、退職・廃業・死亡時に共済金を受け取れる「小規模企業共済」が拡充されることとなります。
  小規模企業共済では、これまで、配偶者や子に事業承継した際に受け取れる共済金は、廃業時や死亡時に比べて減額されていましたが、平成27年度税制改正により、小規模企業共済法の改正を前提に、配偶者・子への事業承継に対する減額を廃止する見通しです。
  この減額措置が、日本経済の喫緊の課題である中小企業の円滑な事業承継を阻害していると考えられたため、今回の税制改正により改正されるということです。
● 小規模企業共済の制度の概要
  同制度は、小規模企業の役員が退職した後の生活資金や、個人事業者が廃業した後の再起をサポートするものとして創設されたものですが、掛金は月額1,000円から7万円の間で自由に設定でき、納付した期間と納めた掛金総額に応じて、支払事由が発生したときに共済金を受け取れる仕組みです。
  廃業や死亡のほか、65歳以上で180か月以上の加入期間があれば、加入者がリタイアしていなくても、「老齢給付」として共済金を受け取ることも可能です。
  ここで、共済金の支払事由には、その理由によって、「A・B・準」の3種類に分類がなされ給付額が算定されています。
  「A」では掛金に概ね1.5%の利率で複利計算した額が支払われます。「B」では同1.0%です。一方、「準」では掛金相当しか支払われません。
  現時点の制度では、「A」には廃業・死亡等が該当していますが、個人事業者の子・配偶者への承継については「準」の扱いとされ優遇されていません。これが「A」に引き上げられることが大きな改正ポイントです。
  また、「B」には、老齢給付や会社等の役員の死亡・疾病等による退任等が該当していますが、ここに死亡・疾病等を理由としない65歳以上の退任が「準」から引き上げられる予定です。
● 払込時・受取時のトリプル税優遇がある!
  同制度の注目点は、その税負担軽減効果であり、@掛金の払込時、A共済金の受取時、B遺族の受取時の3段階で税優遇を受けられるという「トリプル税優遇」が大きな特徴です。
  共済掛金は、「小規模企業共済等掛金控除」として、全額が所得控除(または損金)の対象となり、上限で月7万円(年84万円)まで所得控除が受けられます。
  共済金を受け取る場合でも、廃業や老齢給付で一括受取の場合、「退職所得」となり、勤続年数に応じた退職所得控除を受けられ、課税は控除後の金額の2分の1に圧縮されます。
  また、分割受取の場合、収入は「公的年金等の雑所得」となり、公的年金等控除(65歳以上であれば、最低年120万円)を受けられます。
  そのほか、加入者が共済金を受け取らないまま死亡した場合は、相続税のみなし相続財産(死亡退職金等)となり、「500万円×法定相続人の数」まで非課税枠を活用できることになります。
  掛金支払時・共済金受取時のいずれのシーンにおいても優遇措置がある小規模企業共済ですが、事業承継を円滑に推進させるためにさらに使い勝手が良くなります。訪問先事業所等で、まだ当共済をご存じでないところがあれば、加入の検討を提案するのも面白いかもしれません。
  
木下 直人(きのした・なおひと)
社会保険労務士、CFP、1級DCプランナー、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、保険コンプライアンス・オフィサー2級
  東京大学農学部卒。保険業界勤務。保険税務や社会保険・ライフプランなどの資材作成・研修講義はわかりやすく、面白いとの定評がある。
  
2015.05.18
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