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受取配当等の益金不算入制度見直し
● 実効税率の引き下げと並行して進められる法人税制の見直し
  法人税の実効税率の引き下げが注目の一つとなった平成27年度の税制改正であるが、税収の確保という観点から同時に法人課税ベースの拡大が検討され、欠損金繰越控除制度の見直しや法人事業税の外形標準課税の拡大、受取配当等の益金不算入制度についての見直しが並行して行われた。その中で、欠損金繰越控除制度の見直しや法人事業税の外形標準課税の拡大は大企業を対象としたものであるのに対し、受取配当等の益金不算入制度の見直しは企業規模に関係なくこの4月以降に開始する事業年度から適用される。
● 受取配当等の益金不算入制度の概要と改正点
  この制度は、法人が内国法人から配当を受けた場合に、本来は益金に算入すべきところ、税法上ではその全額または一部を益金に算入しないという取扱いを定めたものである。これは、配当などはすでに法人税が課税された利益から支払われるものであり、さらに課税すれば二重課税になるため、それを回避するための措置であり、株式の保有割合に応じて益金不算入割合が設定されている。
  今回の改正では、株式等保有割合の段階が3段階→4段階となるとともに、保有割合の低い株式等から受け取る配当等について不算入割合が引下げられている。ただし、今回の制度見直しによる影響を軽減するため、保有割合が3分の1以下の株式等(その他の株式等・非支配目的株式等)から受け取る配当等については、負債利子控除の対象外とされた。
  改正前(平成27年3月までに開始する年度) 改正後(平成27年4月以降に開始する年度)
益金
不算入額
(受取配当等の額−負債利子)×不算入割合
  配当の元本となる株式等を取得するために要した負債に対する利子(右欄も同様)
(1)  完全子法人株式等・関連法人株式等
(受取配当等の額−負債利子)×不算入割合
(2)  その他の株式等・非支配目的株式等
受取配当等の額×不算入割合
不算入
割合
区分 割合
完全子法人株式等
(株式等保有割合100%)
100%
関連法人株式等
(株式等保有割合25%以上)
上記以外の株式等
(株式等保有割合25%未満)
50%
区分 割合
完全子法人株式等
(株式等保有割合100%)
100%
関連法人株式等
(株式等保有割合3分の1超)
その他の株式等
(株式等保有割合5%超3分の1以下)
50%
非支配目的株式等
(株式等保有割合5%以下)
20%
● 中小企業への影響は?
  中小企業で取引先の株式を保有しているような場合、株式等の保有割合が低いのが一般的と考えられ、配当等を受け取った場合、これまで50%を不算入とできたものが20%に低下するようなケースが考えられる。この場合、負債利子の控除が不要という緩和要素はあるものの、トータルでは課税ベース強化の要因となることも考えられる。中小企業に対する法人税率は、軽減税率の特例(所得800万円部分の税率15%)が延長されているが、本則の税率(25%→23.9%)のように引下げられてはおらず、当制度の見直しだけに限定すれば、増税の要素にもなり得るということになる。
  法人課税の見直しは今後も引き続き行われるが、その影響については、個々の税制の内容はもちろん、トータルな影響についても注目することがますます重要になると思われる。
2015.05.21
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