>  今週のトピックス >  No.3042
今さら聞けない「MERS(中東呼吸器症候群)」って?
● MERSとはどのような病気なのか?
  2012年に初めて確認されたコロナウイルスによる感染症MERS(中東呼吸器症候群)が、隣国の韓国で猛威をふるっている。感染すると、38℃以上の発熱や咳をともなう急性呼吸器症状を呈し、臨床的な情報ではほとんどの場合、肺炎を引き起こす。体力の衰えている高齢者などの場合、腎不全などを併発し、最悪の場合は死に至るケースもある。
  本稿が掲載される頃には状況が変わっているかもしれないが、6月24日現在、韓国内での感染者数は175人、死者数は27人にのぼっている。6月1日に確認された輸入症例が18件であったことを考えると、その急速な拡大が周辺国にも強い懸念をもたらしている。そもそも、このMERSとはどのような感染症なのか。コロナウイルスというと、03年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)が思い出されるが、それとの違いは何か。ここで改めて整理してみよう。
  そもそもMERSは、主に中東地域(アラブ首長国連邦、イエメン、イラン、オマーンなど)で患者が確認されており、この地域以外での欧米諸国などの患者は、すべて中東地域への渡航歴のある人、もしくはその接触者であることが分かっている。ただし、今回の韓国での感染拡大により、三次・四次感染が疑われつつあり、WHO(世界保健機関)も韓国内の患者の状況を注視している。
  というのも、人がどのようにMERSに感染するかは、まだ正確には分かっていないからだ。現状、中東のヒトコブラクダがMERSウイルスの感染源の一つとされている(なお、日本国内のヒトコブラクダを調査した限りでは、MERSウイルスを保有する個体は確認されていない)。ただし、今回の韓国での感染例を見ても、患者の中にはヒトコブラクダとの接触がないケースも多く含まれている。
  その場合、患者間、患者−医療従事者間など濃厚接触者間での感染も考えられる。具体的には、インフルエンザなどと同じく飛沫感染(咳やくしゃみなどのしぶきによる感染)となる。一方で、厚労省は、インフルエンザほどの持続的なヒト−ヒト感染はないとしている。なお、MERSウイルスと03年のSARSウイルスは遠縁にあたるものの、SARSより感染伝播は強くないという指摘がある(国立感染症研究所HPより)。もっとも韓国でのケースを見る限り、隣国となる我が国内の不安は今後も高まっていくのは間違いない。
● MERS対策
  塩崎厚生労働大臣は、6月12日に「MERSに関するメッセージ」を発信し、中東地域に加えて韓国からの入国・帰国者に対する検疫体制を強化した旨を示している。また、中東・韓国から帰国後2週間以内に、発熱、咳、呼吸困難などの症状が発生した場合には、医療機関に行くのではなく、「直ちに最寄りの保健所に連絡すること」を要請した。
  現在、新型コロナウイルスによって起こる病気への個別の治療方法はなく、ワクチンもない(あくまで対症療法となる)。予防についても、どのように人に感染するのかが十分に解明されていない中では、確定的な情報は伝えられていない。ただし、国立感染症研究所では、呼吸器感染を予防するための一般的な感染対策(手洗い、うがい、患者との濃厚接触を避けるなど)をとることが賢明であるとしている。仮に、国内での患者が確認された場合でも、冷静な対応が求められるだろう。
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第4章 在宅系サービスでは、“重点化”はどう反映されたのか
第5章 国の最重要施策“認知症”対策と介護保険との関係はどうなるのか?
第6章 手厚く加算されたリハビリ・マネジメントの強化で仕事はどう変わるのか
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。
  
2015.06.25
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