>  今週のトピックス >  No.3043
海外に移住、日本で加入した生命保険はどうしたらいい?
  海外で生活されている日本人の方から、「日本にいるときに加入した生命保険があるのだけど、どうしたらいいいの?」という相談をたびたび受けることがあります。実際に海外に移住すると、現地の社会保険システムに加入するために、日本の健康保険や国民年金に加入しなくても良いことになります。それならば、日本での保障はいらないのでは?――と考える人も少なくありません。果たしてどうなのでしょう。
● いつまで海外で暮らせるのか…
  現地での保障はその国の保険に加入することができますが、その国にいつまで滞在するのかによって、日本での保障を継続するのか、継続しないのか見極めていくことが必要になってきます。
  また、移住した本人や家族が病気等を患い日本に帰国する。職を失い帰国せざるを得なくなったというケースも少なからず起こっていますので、住まいだけでなく医療保障に関してもいつでも日本に帰りやすい状態(一時帰国も含め)にしておくことが望ましいでしょう。
● 相続財産はどこにある?
  例えば、本人は海外に移住していても、日本に親や兄弟など家族がいる場合、その方に相続が発生して、海外移住者が日本にある財産を相続することがあります。また、海外に移住した人の財産(例えば不動産など)が日本にあって、それを国内に在住する子どもや孫が相続することもあります。これらはすべて、日本で相続税の納税義務が発生します。
  もちろん、移住国の通貨で十分な預貯金があれば納税資金は確保できるかもしれませんが、確実に円での支払いになるのが分かっているのなら、日本円で準備をしておくと為替のヘッジにもなります。
  例えば、「契約者=国内在住の親、被保険者=国内在住の親、受取人=海外移住の子」あるいは「契約者=海外移住の親、被保険者=海外移住の親、受取人=国内在住の子」という契約形態の生命保険なら、確実に相続人が「円」を手にできるため安心感は大きくなります。終身保険や長期平準定期保険に加入しているのであれば、解約しないほうが良いでしょう。
  なお、移住国で得た財産の相続については、原則、その国の法律に則って相続税等を支払うことになりますが、被相続人、相続人ともに5年を超えて海外に暮らしている(日本国内に住所を有していない)場合でない限り、日本での相続税についても納税義務があります。
● 海外で日本の医療保険を請求する
  現地の健康保険に加入する場合、日本の医療保険はいらないと感じる人は多いのですが、日本の医療保険は海外で治療を受けても請求することが可能です。
  請求方法は各保険会社の所定の請求用紙と診断書等が必要になり、現地から郵送ないしは帰国後に保険会社に提出して請求することができます。
  つまり、日本の医療保険は、海外生活においても十分に活用ができるのです。
※医療法に定める日本国内にある病院または診療所と同等の海外にある医療施設によるもの。
● 大切なお金のことだからこそ、日本で管理する
  諸外国には魅力的な金融商品や生命保険があり、そちらの商品の方が良いように映るケースがあります。実際に外国語で書かれている保険証券を見て、保険金を請求することは並大抵のことではありません。
  大切なお金のことだからこそ、自分が慣れ親しんだ言語で書かれているものを利用しておくことで管理しやすくなりますし、万一のときにはスムーズに活用できるようになるのです。
  
飯田 道子(いいだ・みちこ)
海外生活ジャーナリスト/ファイナンシャル・プランナー(CFP)
  金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっている。主な著書には、「宅建資格を取る前に読む本」(総合資格)、「介護経験FPが語る介護のマネー&アドバイスの本」(近代セールス社)などがある。
  海外への移住や金融、社会福祉制度の取材も行う。得意なエリアは、カナダ、韓国など。
  
2015.06.29
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