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心の病で労災認定、過去最高に
● 前年度より61人増えて、497人が心の病で労災認定
  厚生労働省は6月25日、平成26年度の「過労死等の労災補償状況」を取りまとめ、公表した。過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の状況について、同省は平成14年から労災請求件数や、「業務上疾病」と認定し労災保険給付を決定した支給決定件数などを年1回、取りまとめている。
  発表によると、仕事のストレスなどで「心の病」(精神障害)を患って、労働災害(労災)と認められた人が過去最多となった。平成26年度は、労災を請求した人は1456人。そのうち労災認定されたのは、前年度より61人多い497人に達し、調査開始以来、過去最多となった。心の病で労災認定された方のうち自殺や自殺未遂をした人は前年度より約6割増の99人で、こちらも過去最多だった。
● 過労死ラインの80時間以上が約4割に
  年齢別にみると、心の病による労災の支給決定件数は、40〜49歳が140件、30〜39歳が138件、20〜29歳が104件となっており、働き盛りである30代と40代が多くなっている。この年代は、ちょうど責任ある仕事を任されている時期でもあり、労働時間も長くなりがちでかつストレスを抱えやすいため、さまざまな視点からメンタルヘルス対策の実行が不可欠であるといえる。
  原因別では、労災事故など「悲惨な事故や災害の体験・目撃」が172件で最も多かったが、最近はパワハラに関連して取り上げられることも多い「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」というのも69件と比較的多かったことは押さえておきたい。
  このような心の病の労災に、長時間労働が影響していることも調査結果から明らかになった。時間外労働が過労死ラインである月80時間以上の人が約4割。自殺や自殺未遂をした人に絞ると、月80時間以上の割合は約6割に高まっていることから、企業側としてはまずは時間外労働を削減することが急務である。
  社員のメンタルヘルス不調に対して企業は最重要課題として取り組まなければならないことは明白であり、労働時間削減だけに限らず、社員が安心して働くことができる快適な職場環境を構築する義務が企業側にはあることを忘れてはならない。従業員から信頼されるためには、メンタルヘルス不調に関する経営陣の考え方や発言そのもの、そしてメンタルヘルス不調でやむを得ず休職している人への対応の仕方も社員からよくみられているということを覚えておきたい。
参考  : 厚生労働省 平成26年度「過労死等の労災補償状況」を公表
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2015.07.06
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