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創業記念などで支給する記念品の税務上の取扱い
● 支給する記念品が給与課税されないための要件
  創業記念や永年勤続表彰などで従業員に記念品を支給する企業は少なくない。そこで、支給する記念品が給与として課税されないためには、(1)支給する記念品が社会一般的にみて記念品としてふさわしいものであること、(2)記念品の処分見込価額による評価額が1万円(税抜き)以下であること、(3)創業記念のように一定期間ごとに行う行事で支給をするものは、おおむね5年以上の間隔で支給するものであること、との全ての要件を満たす必要がある。
  一方、記念品の支給や旅行や観劇への招待費用の負担に代えて現金、商品券などを支給する場合には、その全額(商品券の場合は券面額)が給与として課税される。また、本人が自由に記念品を選択できる場合にも、その記念品の価額が給与として課税される。
● 原則給与課税される旅行券の支給に注意!
  特に、旅行券の支給には注意が必要だ。一般的に、旅行券は有効期限もなく、換金性もあり、実質的に金銭を支給したことと同様になるので、原則として給与等として課税される。
  ただし、課税されない要件がある。それは、(1)旅行の実施は、旅行券の支給後1年以内であること、(2)旅行の範囲は、支給した旅行券の額からみて相当なもの(海外旅行を含む)であること、(3)旅行券の支給を受けた者がその旅行券を使用して旅行を実施した場合には、所定の報告書に必要事項(旅行実施者の所属・氏名・旅行日・旅行先・旅行者等への支払額)を記載し、これに旅行先等を確認できる資料を添付して会社へ提出すること、(4)旅行券の支給を受けた者が、その旅行券の支給後1年以内に旅行の全部又は一部を使用しなかった場合には、その使用しなかった旅行券は会社に返還すること、との要件を満たしている場合は、給与等として課税しなくても差し支えないとされている。
  永年勤続者の表彰に当たり、旅行に招待する場合は課税対象とならないが、旅行への招待に代えて、例えば、10万円の旅行券などを支給する場合は注意が必要というわけである。
● 購入時に課税仕入れが認められる旅行券
  ところで、この旅行券を購入した場合は、消費税の取扱いにも留意したい。もちろん、お中元等で商品券等を贈った場合と同様に非課税取引だが、この場合の旅行券は商品券の贈答とは異なり、会社で使用する切手と同じと考えれば間違いない。切手も厳密には買ったときには非課税取引であって、使ったときに課税仕入になるのだが、それでは実務上不便なので買ったときに課税仕入にすることが認められている。
  この場合の旅行券も、上記の要件をクリアして、給与扱いにならないものであれば、切手と同様に自ら使用するものになるので、継続適用を条件として、その旅行券を取得した日に課税仕入とすることが認められている。
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2015.07.06
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