>  今週のトピックス >  No.3057
ブラック企業が戦々恐々となる「かとく」とは?
● 靴の販売大手が書類送検の第1号に
  東京労働局の「かとく」(詳細は後述)は、7月2日、従業員4人が不適切な形で月100時間前後の時間外労働をさせられていたとして、全国に店舗を展開する靴販売大手の会社と役員・店長2人を労働基準法違反の疑いで、書類送検した。今回の書類送検はかなりインパクトもあり、テレビをはじめとして主要メディアでも大きく取り上げられたこともあり各方面から注目されているが、今後も似たような働き方をしている大手企業、特に店舗展開している小売業やサービス業などは狙われることになる。
  さて、話題となった「かとく」とは通称で、正式名称は「過重労働撲滅特別対策班」。厚生労働省が今年4月、従業員に違法な長時間労働や過重労働を強いる企業、いわゆる「ブラック企業」を取り締まる目的で東京労働局と大阪労働局に設置したプロフェッショナル集団だ。前述の書類送検は、東京労働局の「かとく」による栄えある(?)摘発第1号案件である。
  今回は「かとく」という組織の正体についてもう少し掘り下げてみたいと思う。
● 「かとく」は、過重労働に係る労働基準監督官のチーム
  「かとく」は過重労働に係る大規模事案、困難事案等に対応を専従で行っている組織である。担当するのは、労働基準監督官で東京7人、大阪6人と厚生労働省からは発表されているが、現場ではもっと人数がほしいというのが現状であろう。「かとく」は、違法な長時間労働を強いる企業のなかには、パソコンに保存された労働時間のデータを改ざんするなど悪質なケースも多いことから、それに対応するための高度な捜査技術が必要となってくるため、専門機器を用いてデータの解析を行い、過重労働が認められる企業などに監督指導や検査を行っていくということを発表している。今回「かとく」が発足から3か月という短期間で書類送検までもっていったのは注目すべき点である。
  しかしながら、今回の書類送検の事案については、3か月間だけで一気にやったわけではなく、相当前から何度も労働基準監督官が指導し、是正勧告を行っていたといわれており、改善をしなかった結果としてこのような事態になったようである。
  この書類送検された企業が、是正勧告を受けた初期の段階の認識が甘かったことが原因で、このように深刻な事態になってしまったということが推測できるわけだが、今となっては後の祭りで今後の対策のほうが重要である。
  実際に今回のように実名報道されてしまうと、消費者相手のビジネスを行っている有名企業にとってはイメージダウンが避けられず、経営的にも打撃があると思われる。また今後もずっと注目され、監視されることになり、小手先の対応で虚偽の報告を発表していたとなればさらに悪質とみなされ大きな騒動になりかねない。今回の書類送検を各企業も参考にしながら、事前に本気で対策に取り組んでいただきたいところである。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2015.07.27
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