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介護保険の負担増、8月より本格スタート
● 費用負担増だけでなく、手続き上の負担増も
  平成27年度からの介護保険制度改正に絡み、8月から、以下の4点について利用者の負担増がスタートする。
  @一定以上所得者のサービス利用負担が2割に
  A現役並み所得者の月あたりの自己負担限度額がアップ
   (@、Aともに65歳以上の第一号被保険者が対象)
  B介護保険施設入所(短期利用含む)の際の補足給付の要件を厳格化
  C特養ホームの多床室利用における室料負担が発生
  問題は、費用負担だけでなく手続き上の負担も増すことだ。この点を含め、改めて整理してみよう。
  まず@だが、「一定以上所得者」とは、原則として年間の合計所得金額が160万円以上(単身で年金収入のみの人は、年収280万円以上)の者を指す。ただし、本人の「年金収入+その他の合計所得金額」が280万円未満などの場合は1割にとどまるなど例外もある。いずれにしても、自分の負担が1割か2割かについては、市町村から送付される「負担割合証」で通知される。介護保険サービスを利用する際は、この負担割合証の提示が必要となる。
  Aについては、これまで低所得者(市町村民税非課税世帯など)以外は「一般世帯」として、月あたりの自己負担限度額は37,200円となっていた。この限度額をオーバーした場合は、高額介護サービス費として還付されるしくみである。この「一般世帯」のうち、現役並み所得に相当する第一号被保険者がいる世帯については、44,400円に引き上げられる(これも、同一世帯の第一号被保険者の収入合計額が520万円未満などの場合は、例外的に「一般世帯」のままとなる)。
  ただし、自分がどの世帯区分に該当するかについては、改めて市町村に申請をしなければならない。申請については家族や担当するケアマネジャーなどが代行することもできるが、申請書(介護保険基準収入額適用申請書)には、世帯内の第一号被保険者全員の収入を書き込む欄があり、こうした個人情報が他者の目にふれることへの抵抗が生じる可能性もある。
● サービスの利用控えにつながらないか懸念
  同様の「個人情報」にかかわる申告が、より厳しくなるのがBだ。施設入所および短期入所に際しては、居住費・食費は原則として全額自己負担となる。ただし、低所得者(市町村民税非課税世帯など)については、段階的に負担限度額が設けられ、基準費用額との差額は介護保険から支給される。これを「補足給付」という。このしくみでは、どの所得段階における補足給付の対象となるか(低所得者か否かなど)という判定に際し、収入だけでなく、本人および配偶者の預貯金なども勘案されることになった。そのため、申請に際して「預貯金等に関する申告」を記入することも必要となる。
  加えて、その申告内容の精査のため、預貯金等の通帳の写しや市町村(保険者)が金融機関調査を行なうための同意書の添付も求められる。これも代行申請は可能だが、通帳の写しなども添付するとなれば、これも心理的な抵抗は強くなるだろう。
  さらに「低所得者」以外の人が特養ホームに入所(あるいは短期利用)した場合、今度はCも適用される。これまで多床室(4人部屋など)を利用すると、低所得者以外でも居住費のうちの光熱費相当を負担すればよかったが、8月以降は室料がプラスされる。
  このようにさまざまな負担増が訪れる中、サービスの利用控えなどが生じないかどうか(特に家族の介護負担軽減にとって重要な短期入所など)は、今後検証が必要となるだろう。
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<目次>
第1章 今回の介護保険制度改正の狙いは何か
第2章 まず、最も利用者の多い訪問・通所介護を掘り下げよう
第3章 特養ホーム等、施設の基本報酬ダウンと中重度者対応への重点施策
第4章 在宅系サービスでは、“重点化”はどう反映されたのか
第5章 国の最重要施策“認知症”対策と介護保険との関係はどうなるのか?
第6章 手厚く加算されたリハビリ・マネジメントの強化で仕事はどう変わるのか
第7章 介護職員の処遇改善はどのように進んだのか
第8章 総合事業による介護保険の「スリム化」そして“重点化”にどう対応したらいいのか
  
田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。
  
2015.07.30
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