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馬券の払戻金、買い方によっては雑所得を認定
  今週のトピックスNo.2996でも紹介されているが、競馬の馬券の払戻金について、“一時所得”か“雑所得”かで争われていた裁判において、最高裁判所の平成27年3月10日判決で「事案における競馬の馬券の払戻金は雑所得」とする被告側の主張が認められた。それに伴い5月には国税庁から「競馬の馬券の払戻金に係る課税の取扱い等について」という通達改正文書が出され、該当箇所の法令(所得税基本通達)も改正された。
● 最高裁判決の概要
  事案の内容を整理すると、国税側は、「競馬の馬券の払戻金等については、所得税基本通達34−1に基づき“一時所得”である」とし、一時所得額を算出するための必要経費の範囲について、「的中した当たり馬券の購入金額に限られる」という考え方を主張。それに対して被告側は、「営利を目的とする継続的な行為によって得られた所得であるため“雑所得”」であり、必要経費の範囲についても「当たり馬券の購入金額に限定されず、外れ馬券を含む一連の馬券購入費が含まれる」ことを主張していた。
  実際、被告人は自宅のパソコン等を用いて馬券を数年以上にわたって大量かつ網羅的に、1日当たり数百万円から数千万円、1年あたり10億円前後購入し続けていた。つまり、被告の行為は、購入した個々の馬券を的中させて払戻金を得ようというものではなく、長期的に見て、当たり馬券の払戻金の合計額と外れ馬券を含むすべての馬券購入代金の合計額との差額を利益として得ることを意図したものと考えられる。
  最高裁判所ではこのような実態から、「競馬の馬券の払戻金はその払戻金を受けた者の馬券購入行為の態様や規模等によっては、一時所得ではなく雑所得に該当する場合があり、その場合には外れ馬券も所得金額の計算上控除すべきである」との見解に基づき判決をしている。
● 最高裁判決を受けての国税庁の対応
  まず、取扱いを規定している所得税基本通達34−1が5月に改正された。それにより、競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等について、「営利を目的とする継続的行為から生じたもの」を一時所得に該当するものから除くこととされた。
  また、同様の購入行為の態様や規模等によって馬券の払戻金等を得ており、今回の通達の改正によって過去の所得税の申告内容に異動が生じ所得税が過納付となっている場合には、国税通則法の規定に基づき、この取扱いの変更を知った日の翌日から2カ月以内に所轄の税務署に更正の請求を行うことにより、過納付となっている所得税が還付される取扱いが行われる。
  経済活動のますますの多様化により、現行の法令では取扱いについての解釈が分かれるケースが今後も多く発生することが予想され、これらに対してどのような判断が下されるのか大いに注目されるところである。
参考 国税庁ホームページ「競馬の馬券の払戻金に係る課税の取扱い等について」
2015.08.03
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